オウンドメディアの役割とは? 目的別に分かりやすく解説
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近年、インターネットやスマートフォン、タブレットの普及率が高まり、顧客が企業の商品やサービスを目にする機会が多様化しています。なかでも企業が情報発信をするオウンドメディア(Owned Media)に注目が集まっています。オウンドメディアを成功させるためには、その役割を明確にすることが大切です。そこで本記事では、オウンドメディアが持つ役割と効果的にオウンドメディア運営をしている成功事例を詳しく解説します。
オウンドメディアについて知りたい方は以下の記事もご参照ください。
オウンドメディアが持つ役割①:ブランディング
オウンドメディアの持つ役割のなかで大きな割合を占めるのが自社のブランディングです。現在のWebマーケティングにおいて、効果的なアプローチ方法として知られるのがトリプルメディア戦略で、2009年に提唱されました。トリプルメディアは次の3つのメディアから構成されています。
・オウンドメディア
・ペイドメディア(Paid Media)…既存の媒体を利用して、リスティング広告やマスメディア広告などを出し、幅広いユーザーにアプローチする
・アーンドメディア(Earned Media)…主にソーシャルメディアを通して情報を発信するメディア(FacebookやTwitter、Instagram、LINEなど)
トリプルメディアの特徴はそれぞれ異なりますが、オウンドメディアは、自社の商品やサービスの強みやオリジナリティをアピールしやすく、ブランディングに適しているメディアといえるでしょう。
他社競合が多く存在する商品やサービスについて発信したい場合、オウンドメディアなら企業独自の思い入れや考え方を自由にアピールでき、他社との差別化につながります。信頼できる情報やユーザーの興味をひくコンテンツを制作することで、企業が提供する商品やサービスへのイメージもよくなり、企業に対するイメージアップにもなります。
単に商品やサービスに関するコンテンツ以外にも、企業の理念や商品開発までの道のりなどをユーザーに知ってもらえる場としても活用できるのがオウンドメディアの強みです。ブランディングが成功すれば、提供する商品やサービスの価値が増して、おのずと購買行動にもつながるでしょう。
▼オウンドメディアのブランディングについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
オウンドメディアが持つ役割②:ファン獲得
前述したブランディングに成功すれば、アクセス数が増えてオウンドメディアのファンも増えます。単に自社商品をPRするだけではファンは簡単に獲得できません。現在、Web上にはさまざまな情報があふれており、読者は容易に知りたい情報にアクセスできます。
そのため、オウンドメディアで商品やサービスに関連するお役立ち情報やユーザーの興味をひくコンテンツを充実させることが重要です。ユーザーがより信頼できる情報を発信できるのは商品やサービスを開発したり販売したりしている企業自身です。オウンドメディアを上手に活用すれば、見込み客獲得につながるでしょう。
オウンドメディアのファンになりそうな潜在層にターゲットをしぼるのも効果的な方法です。商品やサービスに興味がありそうなターゲットに合わせたアプローチ方法で、無関心だったユーザーに認知してもらうことから始めましょう。オウンドメディアだけではなく、FacebookやTwitterなどのSNSと連動してユーザーとの接点を増やせば、より高い効果が得られます。
SNSは検索エンジンのアルゴリズムが変わっても影響を受けにくく、一定数の顧客流入が見込めます。SEO対策などを十分にしていても、アクセス数が伸びない場合は、SNSを活用するのがおすすめです。具体的には次のような方法があります。
- ・コンテンツ更新のお知らせ
- ・商品・サービスの紹介
- ・キャンペーンの告知
- ・ユーザーの声やクチコミ募集
ユーザーとの距離が近くなるというSNSの特性を活かして、よりよいコンテンツ作りや集客に役立てるとよいでしょう。さらに、Webサイトを訪問したユーザーが無料メルマガの登録や資料のダウンロードなど、一歩踏み込んだアクションを起こしてくれれば、リピーターやファンになりやすいといえます。
オウンドメディアが持つ役割③:マネタイズ
オウンドメディアの運営に成功すれば、顕在層・潜在層双方のユーザーの集客が期待でき、収益化が可能になります。具体的には次のような方法があります。
- 1.広告収入
- 2.オウンドメディアで自社商品の販売
- 3.セミナーの開催
- 4.有料記事の掲載
- 5.問い合わせ窓口の設置
他にも企業が提供する商品やサービスの種類によってさまざまなマネタイズ方法がありますが、いずれの場合もひとつの方法に依存しないことが大切です。オウンドメディアが持つ役割のひとつとして捉えて、収益化は派生的なものとして考えておくとよいでしょう。
オウンドメディアで発信するコンテンツが魅力的なものであれば、自然にユーザーは興味を持ち、アクセス数は伸びます。そこで自社商品の販売サイトへの誘導などを行うのがよいでしょう。
上記であげた収益化の方法について詳しく解説します。
広告収入
代表的な広告収入には次の4つの方法があります。
・純広告…オウンドメディア内に広告枠を設置して、広告を掲載して収益を得る方法
・アフィリエイト…オウンドメディア内に商品の広告を掲載して、その広告から商品やサービスの購入にいたった場合、収益が発生する
・アドネットワーク…複数のメディアに自社の広告を出す手法
・SSP…Supply-Side Platform(サプライサイドプラットフォーム)の略称でインターネット広告を掲載するオウンドメディア側の収益を最大化させるためのツール
純広告については、ある程度のアクセス数が見込めるオウンドメディアでないと、広告枠がうまらないという課題があるため注意が必要です。その他の広告についても、オウンドメディアの規模やユーザー層などに合った広告を選ぶのがよいでしょう。
オウンドメディアで自社商品の販売
オウンドメディアの自社商品の販売は、メディア内のコンテンツを充実させながら上手に商品のプロモーションを行う方法です。最初は購買意欲のなかったユーザーもオウンドメディアを訪問して、自分が知りたかった情報の答えが得られれば、関係する商品の購入につながる場合があります。
ただ、広告色があまりにも強いとユーザーが離れてしまうこともあります。商品やサービス、企業のブランド価値が損なわれるリスクがあるので注意が必要です。そのため、すべてのコンテンツで商品やサービスのプロモーションを行うのは避けましょう。実際に商品を購入した人のレビューなどの情報はユーザーにとって有益ですし、レビューの評価がよければ購買行動につながりやすくなります。
ユーザーの知りたい情報のコンテンツをメインにして、購買行動にスムーズに移行できるよう、オウンドメディア内に販売ページへのリンクや商品ページなどを設置しておくとよいでしょう。
セミナーの開催
セミナーは取り扱う商品やサービスによって形態が異なりますが、基本的には企業側が事業で得た知識などを広く一般のユーザーにレクチャーするものです。参加費を有料にすれば、十分マネタイズが可能です。その分野に明るい専門家や著名人などを招いて、講演会などのイベントを開催するのもよいでしょう。近年はオンラインでのセミナーやイベントも盛んに行われています。
セミナーに参加するユーザーを集めるには、やはりオウンドメディア内で有益な情報を発信してユーザーから信頼されるメディアに成長させることが大切です。
セミナーやイベントは収益化できるだけでなく、動画コンテンツとしてオウンドメディアにアップすれば、立派なコンテンツ資産になります。
有料記事の掲載
有料記事の掲載は、大手メディアも導入している手法です。興味深く読んでいた記事が途中から「ここからは有料会員向けです」などの表示が出て、その先が読めなくなった経験は誰しもあるでしょう。有料会員になれば、有料記事を定期購読できる仕組みです。
有料記事に適しているのは、他の記事よりも多くの人的・物的リソースを使って作成したコンテンツで、読者がどうしても読みたいと思える魅力的なものです。これらは企業の資産にもなります。オウンドメディアの運営が軌道に乗り、認知度が上がって読者が増えれば、有料記事も取り入れてみましょう。
ただし有料記事を導入するにあたっては、通常の記事とどう区別するのか、などの課題もあります。有料記事にばかり注力して通常記事のクオリティが下がれば、オウンドメディアの読者は離れてしまう可能性があります。また、有料で提供できるだけの優れた記事を制作し続けることにも労力がかかります。これらの課題をクリアすれば、オウンドメディアで収益化ができるでしょう。
問い合わせ窓口の設置
オウンドメディア内ですぐに実施できるのが問い合わせ窓口の設置です。一見、収益に直結しないイメージがありますが、ユーザーからの問い合わせは顧客接点になります。見込み客へのアプローチが可能になり、売上につながる可能性があるのです。
▼オウンドメディアの収益化については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
オウンドメディアが持つ役割④:コンテンツの資産化
オウンドメディアに掲載されるコンテンツが資産になることは、メディアを運営するうえで大きなメリットです。オウンドメディアは広告のように掲載期間が決まっているわけではないため、メディアを閉鎖しない限り半永久的にコンテンツは残ります。その点がペイドメディアやアーンドメディアとは異なる点であり、オウンドメディアの強みです。
読者にとって有益で、信頼できる情報の多いオウンドメディアは、検索上位に表示されやすくなります。あわせて検索上位に表示されやすいSEO対策などを実践していれば、おのずと安定したアクセス数が期待できるのです。
アクセス数が増えて、自社の商品やサービスがユーザーの目に止まる機会が多くなれば、売上向上が見込めます。
オウンドメディアと公式サイトの役割の違い
オウンドメディアの「Owned」は所有するという意味を持つことから、自社の公式ホームページと混同されがちです。企業の公式ホームページ(コーポレートサイト)は広義ではオウンドメディアに該当しますが、厳密には役割が異なります。
公式ホームページは企業の概要や事業内容、沿革、IR情報などある程度普遍的な内容を掲載しますが、オウンドメディアでは常にユーザーが興味を持つような新しい情報やお悩み解決型記事などを掲載していることが多いようです。公式ホームページがビジネス上のセールスの役割を果たすのに対して、オウンドメディアではおもに集客やブランディングなどの役割があります。
読者になるターゲットも公式ホームページでは企業の取引先や従業員、株主がメインですが、オウンドメディアでは不特定多数のユーザーが対象になる点が大きな違いといえるでしょう。
オウンドメディアの役割が分かる成功事例①:株式会社ベネフィット・ワン
企業向けの福利厚生事業や代行サービスなどを展開する株式会社ベネフィット・ワンでは、オウンドメディア『BOWGL(ボーグル)』を運営しています。“BenefitOne Working and Good LIfe”の頭文字をとって名づけられた『BOWGL』は、“企業の働き方改革は「分かる」から「やってみる」へ”をコンセプトに運用が開始されました。
立ち上げのきっかけになったのは、Web広告費が高騰したことと同社が運営している福利厚生サービスのためのサイト『ベネフィット・ステーション』の運営で成果があまり出ていなかったことの2点です。
Web広告費が高騰すると、CPA(Cost Per Action=顧客獲得単価)もおのずと上がります。1件の顧客を獲得するためには、広告費の予算も上がり、リソースも必要で、非常にコストパフォーマンスが低くなってしまうのです。そこでリード(見込み顧客)獲得の場をオウンドメディアにシフトしました。もうひとつの課題である『ベネフィット・ステーション』のSEO対策が機能しにくかった点も、オウンドメディアを立ち上げることで解決を試みたのです。
『BOWGL』では、ユーザーにとって有益なコンテンツを提供することを優先しています。「福利厚生」や「人材育成」「働き方改革」「従業員エンゲージメント」「ワークライフバランス」「健康経営」など、昨今の企業経営には欠かせない課題をテーマに、プリマハム株式会社や日本電信電話株式会社を始めとする企業の好事例を多数掲載しており、コンテンツとしても非常に分かりやすく参考になる内容です。
さらに福利厚生事業で得たノウハウを活かして、コラム型のコンテンツも充実しており、自社サービス導入後の効果などを効果的にアピール。働き方改革のポータルサイトとして成功しています。
『BOWGL』ローンチ後、月に20本ほどのコンテンツをアップしていましたが、わずか3ヶ月ほどで1日(営業日ベース)1CVの獲得を可能にしました。さらにコンテンツSEOにも注力しており、「福利厚生」や「働き方改革」「ワーク・ライフ・バランス」などのキーワードで検索順位も獲得しています。特に「働き方改革」の分野は政府も推奨していますが、『BOWGL』は「働き方改革」のキーワードで首相官邸の公式ホームページよりも上位に表示されたほどです。
そのため同社が提供する各種サービスの利用につながっている好事例といえるでしょう。福利厚生事業は企業が対象となるため、B to Bビジネスです。B to Bは、一般ユーザー向けよりは難しいイメージがありますが、広告施策に頼らず、質の良いコンテンツを掲載することで顧客獲得という大きな役割を見事に果たしています。
担当者が「ユーザーにとってメリットのあるコンテンツとは何か」を追求し続けた結果、蓄積されたコンテンツはまさに同社の資産です。さらに正確で分かりやすく、有益な情報を発信することで、株式会社ベネフィットワンとオウンドメディア『BOWGL』への信頼が確立されています。
▼『BOWGL』公式ページ
https://bowgl.com/
オウンドメディアの役割が分かる成功事例②:株式会社クラシコム
株式会社クラシコムは、北欧食器専門のECサイト『北欧、暮らしの道具店』をスタートさせています。近年、人気の北欧テイストのおしゃれな雑貨や家具を販売しています。『北欧、暮らしの道具店』では、雑貨や家具を販売しているECサイトのなかにブログ型のコンテンツを掲載しています。
販売する商品のプロモーションにとどまらず、株式会社クラシコムが提唱する「フィットする暮らし、作ろう。」の世界観を体現している人々の生活の様子や四季折々の食材を使ったお料理のレシピなどを掲載しています。あらゆるコンテンツが頻繁にアップされており、読み物としての魅力も十分です。単なるECサイトではない、同じ世界観を求めるユーザーたちのプラットフォームのような役割をはたしています。
『北欧、暮らしの道具店』ではWebサイトの他に、TwitterやInstagramも運営しており、2022年6月時点でTwitterは4.7万フォロワー、Instagramは122.5万人のフォロワーを有する人気ぶりです。
『北欧、暮らしの道具店』が成功した理由には次のようなことがあげられます。
・ユーザーが読みたいと思える上質なコンテンツ作り
・写真を巧みに使って商品の活用例を紹介
良質なコンテンツがあることで商品の魅力がより増して、ユーザーの購買意欲が増して購買行動につながります。また美しい写真は視覚的に効果があり、実際に商品を購入したときの使い方までも想像できる仕組みです。ライフスタイルを提案するという、Amazonや楽天市場などの大手ECサイトとはまた異なったアプローチ方法が成功の鍵といえるでしょう。
その他に『北欧、暮らしの道具店』では動画配信やポッドキャスト、映画などさまざまな媒体で情報を配信しています。動画ではYouTubeにチャンネルを開設しており、北欧や日本で暮らす人々の様子からドキュメンタリー、短編ドラマなど、商品の販売促進にとどまらない多彩な内容が人気です。日常に『北欧、暮らしの道具店』の世界観を取り入れたいユーザーからの支持が絶大で、毎月のPV数やリピート率が高いのが特徴です。
読者の求める情報をふんだんに発信しており、オウンドメディアの役割であるブランディングとファン獲得に成功しています。
▼『北欧、暮らしの道具店』公式サイト
https://hokuohkurashi.com/
オウンドメディアの役割が分かる成功事例③:株式会社国際教育交流センター
留学に関する情報の提供や留学先の紹介、カウンセリングなどを行う株式会社国際教育交流センターでは、オウンドメディア『留学タイムズ』を運営しています。留学を目指す学生やグローバルに活躍したいビジネスパーソンをターゲットに、実際に留学した人たちの体験談や留学に関するあらゆるお役立ち情報を掲載しています。
その他、留学する国や地域、都市ごとに、現地の気候や物価、文化からかかる費用、おすすめの学校などを詳しく掲載した記事があり、情報の量、質ともに国内最大級といえます。
さらに海外滞在経験が豊富な留学カウンセラーへの相談の実施や提携している海外の語学学校への入学手続きを無料で行い、留学を希望するユーザーから高い評価を得ています。さらに大手旅行会社である株式会社エイチ・アイ・エスと提携しており、格安航空券がセットになったお得な短期留学プランを発売しています。
2021年2月には同じく海外留学をサポートするオウンドメディア『スマ留』を運営する株式会社リアブロードと業務提携を発表。アフターコロナの社会環境下でより多くの人々が安心して留学できるサポートプランの構築などを目指しています。
株式会社国際教育交流センターは、創立から20年以上という長年の経験で培ったノウハウや世界各国の語学学校とのコネクションを活かして、オウンドメディアを成功に導いています。
実際に同社は長年赤字続きだったのですが、『留学タイムズ』ローンチ後、約6ヶ月でWeb経由での問い合わせ数が月に500件以上にまで増えており、黒字化に成功しています。手厚いサポートと利便性のよさがファンを獲得し、結果的に売上向上につながった事例です。
▼『留学タイムズ』公式サイト
https://ryugaku.net/
オウンドメディアの役割を理解して成功に導こう!
オウンドメディアが持つ役割と成功事例をご紹介しました。オウンドメディアの運営を成功させるためには、まずはオウンドメディアの役割を理解して、その役割にそったコンテンツの制作を進めることが大切です。
できるだけ多くのユーザーに訪問してもらえるよう、自社の商品やサービスに関連したキーワードを設定して、分析ツールなどを効果的に使うのもおすすめです。成功事例なども参考にしていただき、オウンドメディアの運営を成功させましょう。