BtoBとBtoCマーケティングの違いとは?初心者にもわかりやすく解説
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企業と企業が取引をするビジネス形態を指す「BtoB」。日本では企業全体の7〜8割がBtoB領域でビジネスを展開しているとも言われています。そんなBtoB企業のマーケティングを成功に導くには、ビジネスモデルの特性をふまえ、BtoBに特化したアプローチが必要です。
そこで今回は、「BtoCビジネスとの違い」に焦点をあてつつ、BtoBマーケティングの特徴と概要・プロセス・活動手法など、BtoBならではのポイントについて解説します。
なお、BtoBマーケティングについてもっと知りたい方は以下の記事もご覧下さい。
BtoBビジネス・BtoCビジネス、それぞれの特徴を把握しよう
BtoBとは「Business to Business」の略で、企業と企業が取引する、法人の間でのビジネスを指します。対するBtoCは「Business to Customer/Consumer」の略で、企業が一般消費者と直接、取引する小売店や飲食店などのビジネスのこと。「B2B」「B2C」と表記されることもあります。
BtoB企業の例:
・キーエンス
・村田製作所
・TOTO
BtoC企業の例:
・マクドナルド
・アサヒビール
・イオン
なお、BtoBとBtoCの両方の商材を扱う企業も存在しますが、BtoB・BtoC両方の領域でともに成功を収めるのは難しいといわれています。要因の一つは、BtoBとBtoCでは、企業の運営に必要なスキルや組織体制が異なること。両立が不可能というわけではありませんが、難易度が高いのです。マーケティングの活動も、BtoBに特化させた方が成功確率が高まります。
BtoBとBtoCにおけるマーケティングは完全に相反するものではありませんが、意識すべき違いもあります。ここからは、BtoBとBtoCにおける、購買に関するポイントの違いを具体的に確認していきましょう。
BtoBとBtoCの違い①購入の目的
BtoB企業の顧客は、企業や行政機関です。購入は、「材料調達」「課題解決」「売上アップ」など、事業の運営や組織に対するメリットを求めて、なされます。
それに対してBtoC企業の顧客は、一般消費者です。「インスタで見た人気商品が欲しい」「新製品をいち早く手に入れたい」「おいしいものが食べたい」など、個人利用を想定しているため、より幅広い動機で購入に至ります。課題解決よりも、消費が目的になることが多いのがBtoCです。
つまり、BtoBのマーケティングでは、感情に訴えかけるのではなく、
・購入にはどんなメリットがあるのか
・企業の課題をどう解決できるのか
上記をわかりやすく伝えるアプローチが重要です。
BtoBとBtoCの違い②購入・契約を決める意思決定者の数
BtoC企業の商品を買うのは個人。高額な買い物は即決せず家族で相談して決める、ということもありますが、基本的に「買う」「買わない」の意思決定に関わるのは、本人や配偶者など1人か2人です。
一方、企業では通常、担当者一人の意思で契約を決めることはありません。上長をはじめ複数人の確認を経て、決裁権を持つ人の合意を取り付けてからようやく、購入・契約に至ります。
購買の意思決定に関わる人数の違いは、マーケティング戦略でも意識しなければいけません。BtoCで購入してもらうには最低限「目の前のその人」の気持ちを動かせばいいのですが、BtoBでは「ときには数十人」に合意してもらわなければならないのです。
決裁に関わる全員を納得させ、購入への意思を固めるには、具体的な数字を用いて製品・サービスの優位性や、費用対効果などを明確に示すのが有効です。
BtoBとBtoCの違い③取引額と購入サイクル
個人と企業では購買力に大きな差がありますから、当然BtoBの取引単価は、BtoCよりも大きくなります。商品の価格そのものが高い傾向にあり、安価な商材であっても、大量に納品されるため、最終的な金額は上がります。
また、BtoCでは低単価の商品を多くの顧客に対して大量に売ることで利益を確保する“薄利多売”のビジネスモデルが多いのが特徴です。一般消費者向けの商品は、購入の頻度が高く、購入サイクルも短い傾向にあるからでしょう。
BtoBの商品は対照的で、高単価である代わりに、購入サイクルは長いものが多く、一度契約すればリピート頻度は高くなります。
つまり、1度の受注にともなって動く金額が大きいBtoBでは、品質や信頼性が重視されるということです。これも、マーケティング戦略上、重要な特徴です。
BtoBとBtoCの違い④購入の意思決定までの検討期間
購入の意思決定に関わる人数が多く、取引額も大きいという特性上、BtoBビジネスで購入・成約に至るまでには時間を要するのが一般的です。社長や取締役まで話を通して承認を得なければならない慎重な企業や大企業では、購入に至るまでに数ヶ月〜1年かかることもあります。
「即決」される場合も多いBtoCとの大きな違いです。
また、購入の意思決定までに時間がかかるBtoBでは、「他社製品への乗り換え」も容易ではないということ。時間を費やし社内審査をクリアして購入に至ったのですから、そう簡単には止められません。そのためBtoBでは一度受注すると、取引の期間が長くなる傾向があり、すぐに「乗り換え」が起こるBtoCとは対照的です。
BtoBとBtoCの違い⑤対象となる顧客数
BtoC企業は、企業向けに比べて低単価な商品を扱っている分、多くの顧客に対して販売し、数を稼ぐことが前提になってきます。
一方のBtoBは、対企業の商品・サービスですから、取引数はBtoCほど多くはありません。業界が狭ければ、取引先の数も少ない傾向にあります。
したがって、マーケティングにおいても、広く一般に認知してもらうよりは狙うターゲットへのピンポイントなアプローチが重要になってきますし、アプローチの手法もBtoCより限定的です。
BtoBとBtoCの違い⑥判断基準
消費者が購入する比較的安価な商品なら「テレビで見かけたから」「好きなブランドだから」といった感情は立派な購入動機になりますが、企業ではそうはいきません。
費用対効果や事業にとっての有益性を確認、類似製品との比較などもして、情報を整理した上で「購入は本当に必要か?」合理的な判断をしようとします。
では、ここまで紹介したことを踏まえて、マーケティング戦略の違いを把握しましょう。
BtoB特有!理解すべきマーケティングの基礎知識
ここからはBtoB特有のマーケティングの基礎知識を見ていきます。
BtoBマーケ基礎知識①長期戦が前提
検討から購入決定までの期間が長いのがBtoBビジネスの購買の特徴ですから、マーケティングにも時間をかけねばなりません。
顧客の長期に渡る検討期間中、企業側はただ手をこまねいているのでは成果につながらないのは明らか。自社製品の最新情報や商品詳細資料を提供したり、信頼関係の構築に取り組んだりと、適切なタイミングでアクションを起こし続ける必要があります。
長期戦を前提とした事業戦略の立案では、顧客が購入に至るまでの流れをマーケティング視点から段階ごとに切り分けて考えます。マーケティングが機能を発揮する場面として重要なのは主に、「リードジェネレーション」「リードナーチャリング」「リードクオリフィケーション」の3つです。
BtoBマーケティングにとって重要な3段階
「リード」とはマーケティング用語で「見込み客」のことを指し、自社のサービス・商品に興味を持ち、顧客となってくれる可能性のある企業のことです。リードが顧客となり受注に至るまでの過程は、以下のように3段階に分けられます。
リードジェネレーション
自社のサービス・商品に興味を持ってもらうことが出発点です。商品・サービスを開発し、ただ待っているだけでは売れません。まずは見込み客を「作り出す」ところから始めます。これを「リードの創出」「リードの獲得」または「リードジェネレーション」と呼びます。
具体的なニーズや課題としてはまだ認識できていない顧客のことを「潜在顧客」と表現します。潜在顧客にきっかけを与えてニーズを自覚してもらい、見込み顧客に昇格させるのがリードジェネレーションの狙いです。
具体的な活動内容としては、プレスリリース・展示会やイベントへの出展・セミナーの開催・テレアポの実行など、さまざまな種類があります。
オンラインでの施策も含めれば、企業ブログの運用・オウンドメディアでのSEO対策の実施・ウェビナーの開催・SNS広告出稿など、さらに多岐に渡ります。
リードナーチャリング
リードジェネレーションがうまくいけば、新規リード(見込み客)が生まれます。ただし、BtoBビジネスの場合、見込み客の中で、すでに購入の意思が固まっている人は少数派。ほとんどの場合、購入意欲は低いのです。
・コラムを読んで「この企業の商品は品質が高そうだ」と思った
・名刺交換後にアクセスした企業のサイトを見て良い印象を持った
この段階ではまだ、購入には繋がりません。
そこで、次のアプローチでは、リードの自社商品への関心を高め、信頼を獲得し、より具体的な購入検討の土俵にあがることを目指します。
この見込み客を育てるという段階を、「リードの育成」または「リードナーチャリング」といいます。
継続的にメルマガを配信する、定期的にメールや電話でヒアリングをする、などが具体的な手法になってきます。
リードクオリフィケーション
育成したリードの中から、特に興味・関心が強く、購入確度の高いリード(「ホットリード」)を選び出す作業が「リードの選別」「リードクオリフィケーション」です。ホットリードに対してはより具体的な営業活動として商談を持ちかけ、案件化と最終的な成約を目指します。
「どの企業がより購入に近いか?」をより効率的に判断するために用いられるのが「スコアリング」という手法です。
「SNSアカウントのフォローで3点」「資料ダウンロードしたら10点」「セミナー参加で15点」といった具合にリードの行動に点数をつけて、集計点数が一定を超えたらホットリードとみなす、というやり方です。
ホットリードをきちんと選別できていれば、その後、セールス部門に引き継いでからの商談がスムーズに進みます。
BtoBマーケティングはこの3段階に分けて考えることが大前提です。ちなみにこの3段階のプロセスを自動化し、効率化を支援する仕組みが「マーケティングオートメーション(MA)」です。
BtoBマーケ基礎知識②情報収集者と意思決定者、決済者と利用者が違う
BtoBの場合、商品・サービスを実際に使用する人が購入の意思決定をするケースは少数派です。例えば、
・商材を選ぶ人
・商談の窓口になる人
・購入を決定をする人
・決済の最終承認を行う人
・商材を利用する人
1つの商材の導入に至るまでにこれだけの立場の人が関わることもよくありますし、企業規模が大きくなるほど、この傾向が強くなります。
つまり、これらの全員に訴求でき、納得させられるか、という視点がマーケティングでも重要です。
論理的な説明と合理性を伝えられるわかりやすい資料がカギ
立場・役職の違う複数の人が合意するには、
・購入の必要性の論理的な説明
・購入によるメリットと効果が理にかなっていること
が必須です。
マーケティングのアプローチとしては、この2点をクリアにできる資料を用意するといいでしょう。
さらには、部署・役職が違えば、それぞれの人の目線も、日々の業務の中で感じている課題も異なります。ここを意識し、社内のさまざまな立ち位置の人のニーズを汲み取ることをマーケティング施策でも行うべきです。
具体的なケースで考えると、イメージが沸きやすくなります。
【例:「どれが一番?」全員が納得するために必要なもの】
出退勤の記録を効率化したいと考えた総務部のAさん。従業員数が増えてきて、それまでのアナログのやり方では対応できなくなりつつありました。そこで、勤怠管理システム導入の提案をしようと考えたAさんはまず「勤怠管理 システム」と検索エンジンに入力して調べました。ずらりと並んだ検索結果の中から、上位5つのページで紹介されていたツールをAさんはピックアップし、資料を作って部長に見せました。
部長は「この5つの中だと、どれが一番良さそう?」とAさんに尋ねました。Aさんの頭に真っ先に浮かんだのは、検索結果では3番目に表示されたツールです。ツールの操作方法を解説したデモ動画が非常にわかりやすかったのです。
そこでAさんは「3番目です」と答えましたが、動画を見ていない部長には今ひとつ、伝わりません。「5つのツールのメリット・デメリットが一目で比較できる資料を作ってよ」と言われました。
そこでAさんは再度、資料を作り直して部長に見せましたが「システムの導入は本当に必要?」「低コストで多機能なのは5番目のツールだけど、なぜ3番目がいいの?」と渋い反応で、システム導入の必要性から再検討することになってしまいました。
この例からわかるように、企業がモノを購入するには社内で稟議を通さなければなりません。Aさんの提案が部長に受け入れられたら、次に部長はその提案を、経営陣が集まる会議で行い、承認をもらわなければなりません。
「担当者が使ってみて良いと感じた」「自社にマッチしそう」というのは購入するのに適切な理由ですが、企業の最終目的は収益を増やすことですから、まず「費用対効果が見合っている」と数値できちんと示し、決裁者に納得してもらわなければ、その他の検討事項には取り合ってすらもらえないのです。
今回のケースであれば、
・システムの導入により総務部の従業員の残業時間がどのくらい減るのか
・総務部員に支払われる残業代を、システム導入によりいくら削減できるのか
上記2点を数値で示すと、説得力がアップするでしょう。
もしあなたが勤怠管理システムを販売する会社のマーケティング担当なら、これらの数値を具体的に示した資料をホワイトペーパーとして、webサイト上に用意する施策が打てます。競合他社のツールを導入した場合と、自社のツールを導入した場合のコストの比較まで載せれば、Aさんはダウンロードした資料をそのまま部長に提出し、部長は会議にかけられます。
このように、合理性を重視するBtoBビジネスではデータ・数値による説得力やエビデンスが重視されます。サービスの導入によって課題が解決できることを客観的に表現しましょう。
資料は「他部署の人にもわかりやすいレベル感」で作成しよう
BtoBのマーケティングで用意する資料は、そのまま社内稟議に活用できるように制作することがポイントです。
今回の例でいえば、部長がツールの導入を提案する会議には総務部以外のメンバーも参加しますから、総務部の業務を熟知している人ばかりではありません。
日常的に当該の業務に携わっている人にとっては「当たり前」と感じられるレベルの内容でも、他部署の人にとっては理解しがたいこともありますから、資料は誰にとってもわかりやすいものであることが大切です。
・直感的に内容を把握できるようにグラフや図解を入れる
・著名な企業の実例を挙げて説明する
などの工夫をしてみてください。
BtoBでも担当者は「個人」 感情に訴えかける部分と論理性を使い分けたアプローチが成功の秘訣
論理性・合理性が注目されるのは事実ですが、一方で、BtoBビジネス=完全にドライな領域というわけでもありません。
「この商品を導入したら絶対にうちの企業のためになる」
「この企業から購入すると今後のビジネスに大きなプラスにつながる」
「この営業担当さんから買いたい」
BtoCと同様、担当者個人の感情に訴えかけ、心をつかむアプローチで信頼関係を築くことも時には必要です。
BtoBマーケ基礎知識③購入後も「長い付き合い」が続く
一度受注したら「乗り換え」にくいのもBtoBビジネスの特徴でした。つまり、顧客に何度もリピートしてもらい、1社の顧客から得られる金額を増やす取り組みがBtoBビジネスでは不可欠です。
ちなみに、顧客が自社と取引を始めてから、関係が終了するまでの全取引から得られる利益の合計を示す指標を、LTV(Life Time Value=「指標生涯顧客価値」または「顧客生涯価値」)と呼びます。
LTVを向上させるには、既存顧客との丁寧なコミュニケーションを行ない、関係性を維持し、満足度を高めることが非常に重要です。
具体的には、CRM(Customer Relationship Management)と呼ばれる、顧客情報を管理するためのマーケティング手法が重要視されています。中でも、顧客が自社の製品・サービスを有効に活用して、ビジネスを成功に導くためのアプローチが求められ、これを「カスタマーサクセス」と呼びます。
顧客からの悩み・疑問に回答するサポート部門を設置する、使い方をレクチャーするセミナーを開催するなどして、サービスの利用状況を把握します。そして改善すべき点があれば積極的にアドバイスをしていきます。顧客にアンケートを実施する、実際に顧客と接する立場のスタッフと連携するなどして「生の声」の収集・分析も同時並行で進めます。
近年、特に拡大しているSaaS(サース:Software as a Service:インターネット上で使用できるインストール不要のソフトウェア)といったサブスクリプション型のサービスでは、利用を継続してもらわなくてはなりません。
また、買い切り型のサービスでも、次回購入の際に真っ先に検討に上がるのはすでに利用実績のある企業の製品です。「売れたらゴール」ではなく、契約=スタート地点、ととらえ、商品・サービスの質に直結する部分として取り組みましょう。
BtoCとの違い・共通点を知ればBtoBマーケティングがもっとよく分かる
Webマーケティングの発展が目覚ましい今、BtoBマーケティングの重要性は従来よりも増しつつあります。BtoCとの違いを意識することで、BtoBマーケティングで成果をあげるためのポイントの理解に役立ちます。
BtoBとBtoCでは、マーケティングの手段が異なります。しかしながらユーザーのニーズを満たす・求める価値を提供するという本質は、BtoBもBtoCも同じ。自社のことを認知してもらい、集客につなげて購入、そしてリピートを狙うのは両者に共通です。この原則は頭にいれつつ、BtoBビジネスへの理解を深めることを目指しましょう。