オウンドメディア成功のカギを握る戦略とは? 立て方や事例を含めて徹底紹介!
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オウンドメディアがその目的を達成できるかどうかは、戦略の立て方にかかっているといっても過言ではありません。オウンドメディアの戦略立案には事前調査や競合他社との差別化、KPI設定など、欠かせないポイントがあります。この記事ではオウンドメディア戦略の定義や考え方などについて、成功事例を含めて解説・紹介します。
オウンドメディアについて知りたい方は以下の記事もご参照ください。
オウンドメディア戦略の定義と前提条件
戦略でオウンドメディアの方向性を示す
オウンドメディアを運営することで企業の利益を拡大しようと試みたものの、どこに効果が出ているのかよくわからないといった声があります。効果を確認できないようではオウンドメディアに投じたリソースが無駄になってしまいかねません。効果が感じられない原因として、方向性が定まっていないケースが考えられます。
オウンドメディアを効果的に活用するためには、目的達成に必要となる具体的な方向性や道筋を示す戦略が不可欠です。オウンドメディア戦略を定義するなら、短期的でより具体的な戦術を包括する中長期的な方策となるものであり、大枠としての運営方法を定めるものといえます。オウンドメディアにおける目的と戦略、戦術の関係を目的が人材採用の場合で例示すると以下のとおりです。
- ・目的:採用活動における顕在層だけでなく潜在層も含めた求職者(ターゲット層)への訴求
- ・戦略:顕在化している求職者と潜在的な求職者へ向けて展開すべきサイトの性質やコンテンツの種類を段階ごとに示す
- ・戦術:戦略に合致するタイムリーで求職者に役立つ個別コンテンツの制作と公開
オウンドメディアの運営目的を明確にする
オウンドメディアは文字通り自社独自のメディアであり、どの企業にも通じる共通のカタチはありません。また、自社内であっても目的が異なるオウンドメディア間で戦略が異なるのは当然といえます。
戦略はオウンドメディアを成功へ導くための方向性を示すものであり、戦略立案のためには目的の明確化が不可欠です。なぜオウンドメディアが必要なのか、運営する目的は何かがぼやけていては、どこを向けばよいのかわからず、戦略の立てようがなくなります。
また、向かうべき方向や相手がわかっても、いつまでに結果を出すのかが決まっていなければ、効率のよい運営から遠ざかってしまうかもしれないため時間軸の設定も重要です。このとき、オウンドメディアそのものが即効性のあるメディアではない点に注意する必要があります。
オウンドメディアは基本的に何もないところから立ち上げるメディアです。認知度が上がるまでに時間がかかるため、短期的な目的ではなく中長期的な目的に対して選択されます。
成果の判断基準も明確にする
目的を明確にするとともに、目的達成の判断基準の明確化が重要です。基準をどこに設けるかによって、必要な施策も変わってきます。基準が曖昧では効果的な戦略を立てにくくなります。
また、成果判断は最終的な結果に対してだけでなく、各段階で行われるべきものです。たとえば、オウンドメディアを運営する目的が優秀な人材の採用だった場合、最終的な成果は人材の入社で判断できます。また、マネタイズを目的としている場合はどの程度の収益を得られたかが判断基準です。しかし、どちらの場合もアクセス状況など各段階における成果判断を疎かにしていると、求めている結果に向かっているかどうかの判断を誤る危険性が生じるでしょう。
達成条件は目的や段階によってさまざまです。たとえば、ユニークアクセス数やオウンドメディアからの資料請求、商品・サービスへの問い合わせ、求職者からの質問やエントリー数などがあります。
オウンドメディア戦略はひとつとは限らない
オウンドメディアの運営は、それ自体が企業活動という大きな枠組みの中における戦術のひとつともいえるものです。そのため、販売活動や採用活動、ブランディングなど異なる目的のオウンドメディアを運営することがあります。
また、商品やサービスの販売活動を目的とする場合では、全商品を一括して扱うのか、分野ごとに扱うのかによって運営するオウンドメディアの数が違ってくることも考えられるでしょう。場合によっては特別なアイテムに絞ったオウンドメディアを運営することもあり得ます。このように、複数のオウンドメディアを運営する場合、それぞれのオウンドメディアに適した戦略の立案が必要です。
オウンドメディア戦略立案の考え方
実現可能な戦略を考える
オウンドメディアの戦略立案では、実現可能な戦略を考えることが重要です。一見すると素晴らしい戦略であったとしても、自社の状況にマッチしていなかったり、実現不可能な理想論であったりすると、オウンドメディアの目的達成は見込めないでしょう。もっといえば、費やした時間や労力が無駄になってしまいかねません。
ミスマッチや理想論に陥る背景のひとつに、オウンドメディアに投入できる人材の不足があります。設計通りに運営・運用が可能なスキルを保持する人材がいないために絵に描いた餅になってしまうパターンです。また、最終的な効果の判断が中長期的なものとなるため、設計段階の少しのずれが先に進むほど大きくなってしまう恐れがあります。
効率と費用対効果を考える
オウンドメディア戦略の立案で重視したい点に効率のよさ、費用対効果のよさがあります。無駄なく最大の効果を得られるメディア作りが重要です。
オウンドメディアで情報を発信する際、テキストのダウンロード提供や動画コンテンツ、SNS配信などさまざまな発信方法があります。また、セミナーの開催など展開する施策もいろいろ考えられるでしょう。他社メディアなどを閲覧したときに目に付いたモノを採り入れてみたいと思うかもしれません。
しかし、実現不可能ではないとしても、あれもこれもと欲張ってしまうと作業効率が悪くなる恐れがあります。また、何かを採り入れればその分の費用が必要です。しかし、いろいろ詰め込んだからといって、比例して効果が上がるとは限らず、費用対効果が悪くなることも珍しくありません。効率と費用対効果を考慮したうえで、選択と集中が重要です。
フェーズを考えた戦略設計
オウンドメディアは多くがゼロからのスタートが一般的であり、実際に誰にも知られていない以上、認知度を上げるためには半年なり1年なりの地道な運営が必要です。とくに初期段階では一歩ずつ段階を踏んで運営することが求められます。そのため、フェーズを考慮した戦略設計が重要です。
一例を示すと、開設したばかりのころはサイトとしての基礎を固めるため、コンスタントに優良なコンテンツをアップ、更新するフェーズとなります。次はアクセス数を稼いでファンを育てるフェーズで、既存コンテンツの見直しやブラッシュアップが重要です。必要に応じ、より深化したフェーズを経て目的達成のフェーズへと進みます。
複数の目的がある場合は、それぞれに対応したオウンドメディアを立ち上げて運営するほうが望ましいものの、同一のオウンドメディアにまとめることも可能です。この場合、各目的が達成されるまでのフェーズが同じとは限りません。
たとえば、企業のブランディングと商品・サービスの見込み客強化を目的とした場合、どちらを先にもってくるかはケースバイケースです。ブランディングを確立することによって有力な見込み客を増やすパターンもあれば、商品・サービスの見込み客を育てたうえで、その人たちが持つブランドイメージを向上させるパターンもあります。どちらを優先するかは自社の判断次第です。各フェーズにおいて着実な成果判断を行える戦略の立案・設計が重要となります。
オウンドメディア戦略立案の5大ポイント
事前調査を行う
オウンドメディアの戦略を立案するうえで外せない重要ポイントが5つあります。まずは事前調査です。オウンドメディアを立ち上げて運営する目的が何であれ、自社の都合だけで走り出しても大きな効果は見込めないでしょう。事前に市場規模や業界のトレンドと他社の動向、ユーザーニーズなどを把握しておく必要があります。事前調査を第一歩とすることで有効な施策につながるなど、戦略立案に欠かせない作業です。
具体的な調査内容としては、顧客満足度調査や既存ユーザーへのインタビューなどがあります。また、自社が保有する情報を活用したり、外部の調査データを参考にしたりといった方法も含め、できるだけ詳細な調査・分析となるよう心掛けましょう。
カスタマージャーニーの設定
重要ポイントの2つめはカスタマージャーニーの設定です。その第一段階では、事前調査によって浮かんできた市場動向やユーザーニーズをベースにして、オウンドメディアのターゲットを細部まで具体化します。30代男性会社員といった簡易的なターゲット設定にとどまらず、ペルソナ設定が望ましいといえるでしょう。
ペルソナは30代男性ではなく35歳男性といったように、ターゲットを絞り込んだ設定を行います。さらに、氏名や住所、出身地、職業と役職、年収から家族構成、趣味や休日の過ごし方、情報収集手段など特定の人物像が浮かんでくるような条件設定が特徴です。
カスタマージャーニーとは、ペルソナが自社や商品・サービスを認知し、情報収集~比較検討~購入~その後の評価に至る各フェーズで起こす具体的な行動や思考、接点となるメディア、抱く感情、課題を検討して設定したものをいいます。カスタマージャーニーと呼ばれている理由は、ユーザーの一連の動きを旅に見立てているためです。
ピンポイントともいえるペルソナがどこで自社や自社の商品・サービスと接点を持ち、興味を抱き、他社を含めた比較を行い購入に至るのか、見送るとすれば解決すべき課題は何かを明確にしておくことにより、戦略立案に役立ちます。
第二段階はカスタマージャーニーマップの作成です。カスタマージャーニーは文字だけでは分かりにくい面があります。そこで、パッと見てわかりやすいように考えられたのがカスタマージャーニーマップです。マップの内容に決まりはありませんが、一般的には横軸にフェーズを置き、縦軸に項目を置いた表形式で作成します。
他社との差別化を図る
オウンドメディアは他社と差別化することが3つめの重要ポイントです。インターネット上には無数ともいえるサイトやメディアが乱立しています。企業のオウンドメディアだけでも数え切れないほどの数です。同業他社や同種の商品・サービスのオウンドメディアも多いと考えるべきでしょう。
このような中で特徴をもたないオウンドメディア、他社と似たようなオウンドメディアでは、ターゲットとするペルソナに注目される可能性が下がり、失敗しかねません。いくらリソースを投入してコンテンツを作成し続けたとしても、埋没してしまっては効果を期待できないため、第一に他社との差別化を考えた戦略立案が求められます。
アクセス経路とサイト・コンテンツの設定
オウンドメディアへのアクセスをどの経路から得るのかを考えることと、サイト・コンテンツの設定が4つめの重要ポイントです。
前述のカスタマージャーニーマップにもタッチポイントが設定されているように、ユーザーとの接点は重要な意味をもっています。オウンドメディアへのアクセスルートはしっかりと検討しましょう。検索エンジン経由を重視するならキーワードを意識した上位表示のためのSEO対策が重要です。キーワードだけでなく、内容と検索ワードのマッチング精度が高くなるようにコンテンツを作る必要があります。
SEO対策の効果やアクセス状況のチェックも忘れずに行いましょう。分析ツールの活用も有効です。アクセス解析ツールとして有名なGoogleアナリティクスや各種SEOツールなど、用途に応じた有料・無料のツールが多数あります。
アクセス経路の確保と同時に、集まったアクセスを目的達成に結びつけるためのサイトデザインとコンテンツタイプの決定を行います。使い勝手のよいサイトでなければ、せっかく流入したユーザーが簡単に離れてしまうため、見やすく回遊性の高いデザインが有効です。また、誘導したいページやコンテンツへのリンクなども自然に設置しておきます。
KGIとKPIを設定する
5つめの重要ポイントはKGIとKPIの設定です。KGI(Key Performance Indicator)とは、重要目標達成指標と呼ばれており、ゴールを数値化により可視化します。たとえば、採用人数5人とか利益目標1億円といった内容です。
KPI(Key Goal Indicator)は重要業績評価指標のことで、プロセスを可視化します。売上1件の利益が100万円の場合、1億円の利益目標を達成するためには100件の売上が必要です。この100件がKPIです。成果の判断基準のパートで述べたように段階ごとの評価は重要で、KPIの重要度も高いものとなっています。
欠かせないコンテンツの資産化~検証と改善
コンテンツの資産化を目指す
オウンドメディアではユーザーメリットの高いコンテンツを蓄積できるメディアでもあります。他社メディアには掲載されていない有益な情報がすぐに得られる独自コンテンツなど、蓄積された優良なコンテンツは自社とオウンドメディアの資産です。コンテンツの資産化を目指すことは、ユーザーにとってより利益となるオウンドメディア作りを意味しており、目的達成のための戦略に欠かせない要素となります。
PDCAサイクルの実施
資産化されて蓄積されたコンテンツが永久に資産と呼べるものである保証はありません。時間の経過とともに陳腐化したり、内容が状況に合致しなくなったりする可能性があります。そのままの状態で時間が経過すれば、オウンドメディア自体の価値を毀損しかねません。PDCAサイクルを回して検証と改善を行うことが、最新で役立つオウンドメディアであり続けるために役立ちます。
各フェーズで実施
資産化やPDCAサイクルによる検証、改善は、最終結果が出るような段階になってから行うものではなく、各フェーズで適時行う必要があります。早い段階から実施することで、迅速な改善と鮮度の高い状態の保持が可能です。また、作業にかかる手間も抑えられるでしょう。
オウンドメディア戦略立案上の注意点
予算との兼ね合い
ゼロから作るオウンドメディアの運営には、サーバー関係費用をはじめとして少なくない費用がかかるものであり、立案する戦略、実施する施策によってもその金額が左右されます。よりよいオウンドメディアを作るために予算をふんだんに用意できるならよいですが、そうでなければどこかで折り合いをつける必要があるでしょう。必要最低限のベースに優先度の高いモノから積み上げるカタチで予算を組むなど、兼ね合いを考えることが重要です。
オウンドメディア運営体制の構築
オウンドメディアの運営には専門知識を有する人材や優れたコンテンツを作成できる人材、効果の分析や改善策の提案ができる人材などによるしっかりした体制が必要です。しかし、前述したようにオウンドメディアに投入できる人材が不足していれば、せっかくの戦略が非実現的なものとなってしまいかねません。
人材不足を解消する方法は2つあります。内製による体制構築を考えるなら新規採用です。採用が難しい場合は、専門業者に外注するなど外部の力を借りる方法が使えます。ただし、運営体制の構築は予算に直結する点に注意が必要です。
サイトとコンテンツの質量維持
オウンドメディアが常に効果を発揮するためには、ユーザービリティも含めたサイトとコンテンツの質量を高いレベルで維持する必要があります。コンテンツ単独では有用であっても、ユーザーニーズや目的からズレていたのでは意味がありません。定期的に優良な記事を公開することや、前述したようにPDCAサイクルを回してコンテンツを改善することが重要です。そのためには、予算や運営体制などのリソースが足りている必要があります。
オウンドメディア戦略の成功事例3選
楽しくてお得なコミュニティサイトでファン育成とブランディング~株式会社コメダ
名古屋に本社がありコーヒーショップの全国展開をしている株式会社コメダでは、「さんかく屋根の下」と題するオウンドメディアを運営しています。コメダ社からの一方的な情報発信ではなく、コメダファンがゆっくりと交流を持てるコミュニティサイトとなっている点が大きな特徴です。トークルームで会話したり、アンケートに答えたり、メニュー関連などコメダならではの読み物を楽しんだりできます。
簡単な会員登録で“コメダ部”に入部するとお得なポイントが貯まるなど、気軽に参加が可能でユーザーのファン化やコメダブランドの向上につながるオウンドメディアです。
▼メディアURL
https://komeda-sankaku.com/
23もの学部を開設する総合大学としてのパワーを訴求~東海大学
学校法人東海大学が設置しており、日本を代表する大規模私立大学の一角である東海大学では、2022年度の組織改編などを機にオフィシャルサイトをリニューアルしています。オフィシャルサイトでありながらオウンドメディアとしての情報発信機能をもっているサイトです。
既存のオフィシャルサイトの資産を継承しながら、ユーザビリティの改善など、新しい顔をもつ魅力的なサイトに生まれ変わっています。23もの学部を擁するスケールメリットと研究・教育機関としての実績と実力、学生アンケートなど、受験生や保護者に役立つ情報を発信するメディアです。
▼メディアURL
https://www.u-tokai.ac.jp/
ひとつひとつの記事が自然に魅力的な商品訴求へ~MONOCO
ECサイト「MONOCO」を運営する株式会社MONOCOは、価値を買えるサイトを目指した事業展開を行っています。ECサイト「MONOCO」は一般的にイメージする一覧形式のECサイトとは大きく異なり、公式サイトの顔も兼ねているオウンドメディアとも呼べるサイトです。
目の前に並んでいるコンテンツは、それぞれのアイテムを使ったブログ風で体験記事のような雰囲気を醸し出しています。ユーザーにとって、自分が使ったシーンを想像させてくれる記事を読めば、自然に商品の魅力が伝わってくるようです。商品訴求に強いオウンドメディアのカタチだといえるでしょう。
▼メディアURL
https://monoco.jp/
オウンドメディアは戦略で勝負する
集客やリードの獲得、広告によるマネタイズにも使え、マーケティングツールとして有力なオウンドメディアを効果的に運営するには、目的に応じた戦略の立案が重要です。戦略を考えるためには専門的なノウハウを持つ人材が欠かせません。
全体的なサイト構成を含めて、重要ポイントを外さない戦略重視のオウンドメディアなら、目的達成への期待も高まります。オウンドメディアで成功したいなら、戦略で勝負しましょう。