オウンドメディアマーケティングとは? 成功事例と活用ポイントも解説
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インターネット市場が拡大している昨今、オウンドメディアマーケティングというマーケティング手法が注目を集めています。この記事をご覧になっている方のなかにも、オウンドメディアマーケティングによってマーケティング市場を拡大したいと考えていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。
今回は、オウンドメディアマーケティングの概要やメリットデメリット、具体的な活用事例、オウンドメディアマーケティングの始め方と活用ポイントなどを紹介します。本記事を参考に、オウンドメディアマーケティングを取り入れてみてください。
オウンドメディアマーケティングとは?
オウンドメディアとは、企業が自身の情報を発信するために運用・管理しているメディア媒体を指します。オウンドメディアマーケティングは、このオウンドメディアを活用したマーケティング手法です。オウンドメディアにはパンフレットやメールマガジン、Webサイト等さまざまな種類が存在しますが、近年のオウンドメディアマーケティングはWebサイトにおけるマーケティングを指す場合が多くなっています。
オウンドメディアマーケティングの役割や目的
オウンドメディアの主な役割は、オウンドメディアを通してユーザーとコミュニケーションをとること、ユーザーの課題解決をはかることが挙げられます。具体的には、ユーザーとWebサイトのコメントやお問い合わせフォームなどでコミュニケーションをとる、ユーザーの困りごとに役立つ情報を発信することにより、オウンドメディアの目的である新規顧客の獲得や既存顧客のロイヤルティ向上・ブランディングを行うなどとなり、さまざまなメリットが得られます。
オウンドメディアマーケティングが注目されている理由
経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」(※1)によると、新型コロナウイルスの影響により一部サービス系分野の縮小はあるものの、物販系やデジタル系分野における電子商取引市場規模は年々拡大しています。インターネット上での製品・サービス購入が増加し、いまや多くの企業がインターネット上の顧客獲得に注力する時代になっていると言えるでしょう。
なかでも、オウンドメディアマーケティングは従来のメディア媒体(テレビや新聞など)の広告効果低下、自社の情報をダイレクトに発信できるチャネル構築、SEO対策強化の面で注目を集めるようになっています。
※1 出典:経済産業省「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」
https://www.meti.go.jp/press/2021/07/20210730010/20210730010.html
コンテンツマーケティングとの違い
マーケティング用語のなかにコンテンツマーケティングというものも存在しています。オウンドメディアマーケティングとコンテンツマーケティングの違いは、コンテンツマーケティングにはオウンドメディアマーケティング以外にも別メディアでのマーケティングも含まれる点です。
現代のメディアはトリプルメディアと呼ばれる3つのメディアタイプに分類されることが多くなっています。トリプルメディアの3つのメディアタイプは、テレビや新聞のような広告料を支払うことで情報発信できるペイドメディア、SNSのようなユーザー起点での情報発信が盛んなアーンドメディア、そしてオウンドメディアが該当します。
オウンドメディアマーケティングの5つのメリット
では、オウンドメディアマーケティングにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここではオウンドメディアマーケティングの主なメリットを5つ紹介します。
効果的なブランディングとロイヤルティ向上
従来のテレビや新聞などのメディアでは、フォーカスしたいポイントが適切に掲載されず、費用をかけたのに思うような効果を得られないこともありました。オウンドメディアであれば、自社がフォーカスしたいポイントを正確に発信できるため、効果的な情報発信ができます。オウンドメディア内でコンテンツを充実させれば、企業や製品・サービスの詳細なアピールができ、効果的なブランディング、ロイヤルティ向上が可能です。
時間や地理に縛られず情報発信ができる
従来のテレビや新聞などのメディアでは、発信する地域や時間が限定的で瞬発的な効果しか得られないという課題がありました。オウンドメディアはインターネット上で情報発信を行うため、時間や地理に縛られず情報発信ができ、ユーザーはインターネット環境さえあれば24時間365日どこからでも情報を閲覧できます。
広告宣伝費を削減できる
オウンドメディアの運用には、サーバーのレンタル・構築や運用人員の確保などのコストが少なからずかかります。しかし、一度オウンドメディアを構築してしまえば、コストを抑えて自由に情報発信ができるようになります。従来の広告に比べれば、トータルでの広告宣伝費を抑えやすいでしょう。
コンテンツが資産になる
メールマガジンやSNSなどのメディアでは、発信したコンテンツは一時的なものになってしまい、過去の古い情報はあまり見られないというデメリットがあります。一方、オウンドメディアであれば、発信したコンテンツがメディア上に蓄積され資産となります。ユーザーは過去のコンテンツもアーカイブから容易に参照可能なため、新規ユーザーと既存ユーザーどちらにもわかりやすい情報発信が可能です。
顧客データの蓄積・分析ができる
オウンドメディアを活用すれば、検索キーワードや閲覧コンテンツ、滞在時間など、コンテンツに訪問した顧客のデータを蓄積して管理可能です。蓄積したデータをもとに分析を行えば、ターゲットにすべき層の確認やより良いアプローチ方法の発見など、新規顧客獲得・市場開拓を狙うためのアクションが行えるでしょう。
また、得られたデータをもとに、ユーザーが関心のあるコンテンツの追加や関連サービスへの導線設置などを行えば、競合他社との差別化をしつつマーケティング成果を得られます。
オウンドメディアマーケティングの2つのデメリット
オウンドメディアマーケティングにはさまざまなメリットがある一方、デメリットも存在します。主なデメリットは以下の2つです。
効果がでるまでに時間がかかる
効果的なオウンドメディア構築には、ターゲットやコンセプトの明確化、それにあわせたサイト設計・デザイン、実際のサイト構築、コンテンツ投入とさまざまな工程が必要になります。また、コンテンツを投入したとしても、すぐに検索順位が上がるとは限らず、ユーザーの閲覧数が増えるまでには時間がかかります。
オウンドメディアを立ち上げ、多くのユーザーの目にふれるようになるまでには時間がかかるため、オウンドメディアマーケティングの効果が得られるまで長期的な視点で運用が必要です。短期で効果が得られないからといって運用をやめてしまうということがないよう注意しましょう。
運用難易度が高い
オウンドメディアマーケティングにおけるコンテンツ作成では、SEO対策の考慮が重要です。SEO(Search Engine Optimization)は検索エンジン最適化と呼ばれ、GoogleなどのWebサイトの検索上位にコンテンツを表示するための取り組みを指します。オウンドメディアで配信するコンテンツがWebサイトの検索上位に表示されなければ、いくら良いコンテンツでも大きな効果は得にくくなります。
SEO対策の難しい点は、検索エンジンのアップデートによりアルゴリズムが流動的であるところです。安定して検索上位に表示するためには、最新の情報を得つつそれに合わせてコンテンツをアップデートしていく必要があります。SEO対策にしっかり対応できる人材の確保は難しく、外注するにしてもコストがかさみやすい点から、オウンドメディアマーケティングの運用難易度が高いというデメリットがうまれています。
SEO対策をしっかり行うのであれば、SEO対策ツールを導入する、SEO対策を外注するなどといった対応が必要です。SEO対策ツールはSEO対策の外注に比べれば安価である場合が多いですが、自社内でSEO対策ツールを扱える(SEO対策の基礎を理解している)人材を確保する必要があります。自社内の人材や運用コストと照らし合わせたうえで、どちらにするか選択することをおすすめします。
オウンドメディアマーケティングの成功事例5選
では、企業での具体的なオウンドメディアマーケティングの成功事例にはどのようなものがあるのでしょうか。今回は5つの企業におけるオウンドメディアの成功事例を紹介します。
ferret
▼オウンドメディア情報
メディア名:ferret
メディアURL:https://ferret-plus.com/
運営会社:株式会社ベーシック
ジャンル:Webマーケティング
コンセプト:マーケターのよりどころ
ferretは株式会社ベーシックが運営しているオウンドメディアです。株式会社ベーシックはWebマーケティングのコンサルタントを行っており、Webマーケティングに役立つ情報を発信しています。いまやWebマーケティングに関するメディアとしては最大級の規模となっており、多くのWebマーケターが参照するオウンドメディアになりました。
自身のオウンドメディアがPVを集め、メディアとして成功することでWebマーケティングコンサルタントとしてのブランディングになり、顧客とのリーチ獲得にもつながります。ferretはオウンドメディアの模範的な成功事例と言えるでしょう。
サイボウズ式
▼オウンドメディア情報
メディア名:サイボウズ式
メディアURL:https://cybozushiki.cybozu.co.jp/
運営会社:サイボウズ株式会社
ジャンル:ITサービス
コンセプト:新しい価値を生み出すチームのメディア
サイボウズ式はサイボウズGaroonやサイボウズOffice、KintoneなどのITサービスを提供する株式会社サイボウズが運営するオウンドメディアです。サイボウズはグループウェアを複数展開している企業であり、オウンドメディアでは組織づくりやチームビルディング、個人としての働き方など、仕事に関するさまざまな情報を発信しています。
現代の企業が抱えるさまざまな課題にアプローチし、課題を解決するための方法としてサイボウズ製品のリーチを獲得できる構造になっています。しかし、あくまでユーザー目線でのコンテンツを発信しており、サイボウズ製品のアピールを全面に出していないところがサイボウズ式の特徴と言えるでしょう。
LISKUL
▼オウンドメディア情報
メディア名:LISKUL
メディアURL:https://liskul.com/
運営会社:SO Technologies株式会社
ジャンル:Webマーケティング
コンセプト:日本のすみずみまでWebマーケティングの力を
LISKULはSO Technologies株式会社が運営するオウンドメディアです。SO Technologies株式会社はインターネット広告事業を展開している企業で、Facebook広告やリスティング広告など、効果的な広告掲載に役立つ情報を中心に発信しています。
LISKULは自社のインターネット広告業で得られたノウハウを惜しみなく発信することで、ユーザーからの信頼を集め、顧客へと結びつけることに成功しています。メディア内のコンテンツも集客・広告や制作・接客、セールスなどといったようにカテゴリ別の一覧でわかりやすくまとめられており、Webマーケター初心者から上級者まで幅広く対応している点が特徴です。
くらしの良品研究所
▼オウンドメディア情報
メディア名:くらしの良品研究所
メディアURL:https://www.muji.net/lab/
運営会社:株式会社良品計画
ジャンル:生活雑貨、暮らし
コンセプト:くりかえし原点、くりかえし未来。
くらしの良品研究所は無印良品を展開する株式会社良品計画が運営するオウンドメディアです。オウンドメディア内では、生活雑貨や暮らしに関わる情報を幅広く発信、コラムやポッドキャストのインタビュー記事などコンテンツが充実しています。
また、くらしの良品研究所の大きな特徴はIDEA PARKというユーザーが無印良品の製品に対してリクエストを送ることができるシステムです。一方的な情報発信ではなく、ユーザーからのレスポンスを受けて自社の製品を改良していこうとする点が、オウンドメディアマーケティングにおいて大きな効果を発揮しています。くらしの良品研究所は2022年1月で運営が終了していますが、オウンドメディアマーケティングにおいて注目すべき成功事例です。
mercan
▼オウンドメディア情報
メディア名:mercan
メディアURL:https://mercan.mercari.com/
運営会社:株式会社メルカリ
ジャンル:ITサービス
コンセプト:メルカリの「人」を伝える
mercanは株式会社メルカリが運営する、採用にフォーカスしたオウンドメディアです。メルカリはITサービス事業の分野で急速に成長している企業ですが、さらなる成長をするために優秀なエンジニアの採用という課題がありました。そこで立ち上げられたのがmercanです。
mercanではメルカリの事業や仕事内容、そして働く社員自身の声をコンテンツとして発信しています。できる限り社員の人となりがわかるよう、社員の顔写真を掲載していたり対談形式のインタビュー記事を多数掲載していたりと工夫がされています。この取り組みは多くのユーザーの目にふれるようになっており、採用だけでなくブランディングとしての効果も得られている点が特徴です。
オウンドメディアマーケティングを始めるには
ここまでオウンドメディアマーケティングのメリット・デメリットや成功事例を紹介しましたが、実際にオウンドメディアマーケティングを始めるには何から着手したらよいのでしょうか。ここではオウンドメディアマーケティングを始める手順を紹介します。
オウンドメディアの目的とペルソナを明確にする
まず、オウンドメディアの目的とターゲットとなるペルソナを明確にしましょう。目的やペルソナが明確になっていないと、サイト設計や発信内容がブレてしまい、効果的なオウンドメディアマーケティングができなくなってしまいます。オウンドメディア運営に非常に重要な部分なので、細かい部分まで十分に落とし込みを行いましょう。
オウンドメディアの発信内容や方針を策定する
運営目的やペルソナが定まったら、それに沿ってコンテンツの発信内容を固めていきましょう。コラム形式にするのか、対談形式にするのかなど、コンテンツの内容だけでなく伝え方も含めて検討が必要です。また、コンテンツ作成を内製するのか外注するのかも検討をしておきましょう。
オウンドメディアサイトを構築する
実際にオウンドメディアサイトの構築を行います。運用コストやセキュリティ性もふまえ、どのサーバーを利用するのかなど設備環境の検討を行いましょう。また、オウンドメディアのコンセプトを反映したサイトデザインを意識して構築を行うのが効果的です。
コンテンツを作成する
オウンドメディアサイトの構築ができたら、コンテンツを作成・投入していきます。コンテンツが充実するまではなかなかPV数が集まらず、マーケティング効果を得られない場合が多いですが、長期的な視点で運用を行いましょう。効果が出ないからといって当初の方針から外れたコンテンツを作成しないよう注意が必要です。
コンテンツのデータ分析を行い、コンテンツの追加・修正をする
データ分析はオウンドメディアの目的・ペルソナと同様に非常に重要です。投入したコンテンツのデータ収集・分析を定期的に行い、当初想定した通りの傾向が得られているかを確認するようにしましょう。コンテンツの閲覧者が当初想定していたペルソナと異なる、などといった場合には、ペルソナやコンテンツの見直し・修正が必要になります。
オウンドメディアマーケティングの活用ポイント
最後に、オウンドメディアマーケティングを活用する際のポイントを3つ解説します。それぞれのポイントをおさえ、効果的なオウンドメディアマーケティングを行いましょう。
長期的な視点で運用する
オウンドメディアマーケティングのデメリットでも解説した通り、オウンドメディアマーケティングは短期的な成果を得にくいという特徴があります。ノウハウがしっかりあれば半年程度からPV数が伸びてくる場合もありますが、多くはさらに長い期間で試行錯誤を繰り返しながら徐々に成果がでてきます。オウンドメディアマーケティングを行う際には、長期的なビジネス戦略としての視点で設計・運用を行うようにしましょう。
目的とペルソナにあわせたコンテンツを作成する
発信しているコンテンツがオウンドメディアの目的やペルソナと合っていないと、オウンドメディアマーケティングの効果が薄れてしまう、適切な効果測定ができないというデメリットがでてきます。あれもこれもとさまざまな効果を狙うよりも、当初決めた目的とペルソナに沿ったコンテンツ作りを行うよう意識しましょう。
SEOや顧客データをもとにコンテンツを追加・修正する
SEOのアルゴリズムや顧客のニーズは流動的に変わるものです。コンテンツ作成時は最新の情報でも、時間が経つと情報が古くなり、ニーズがなくなってしまうことも多々あります。オウンドメディアのコンテンツは資産にはなりますが、作ったまま放置しているだけでは価値がなくなってしまう場合がある点には注意しましょう。SEOや顧客データをもとに、定期的にコンテンツの見直しを行うことが重要です。
オウンドメディアで効果的なマーケティングを!
今回は、オウンドメディアマーケティングの概要やメリットデメリット、具体的な活用事例、オウンドメディアマーケティングの始め方と活用ポイントなどを紹介しました。オウンドメディアマーケティングとは、企業が自身の情報を発信するために運用・管理しているメディア媒体であるオウンドメディアを活用するマーケティング手法です。
オウンドメディアマーケティングは、オウンドメディアを通してユーザーとコミュニケーションをとり課題解決を行うことで顧客に結びつけ、新規顧客獲得や既存顧客のロイヤルティ、ブランディング向上などを実現します。年々インターネット上の市場規模が拡大していることに加え、効果的なブランディングとロイヤルティ向上、時間や地理に縛られない情報発信、広告宣伝費の削減、コンテンツの資産化、顧客データの蓄積・分析による競合他社との差別化の面で多くの注目を集めています。
しかし、オウンドメディアマーケティングには短期的な効果を得にくく、SEO対策や顧客ニーズの変化をふまえた運用の難易度が高いというデメリットもあります。オウンドメディアマーケティングを行う際には、ターゲットやペルソナを明確にし、長期的な視点をもって運用を行うようにしましょう。また、より効果的なオウンドメディアマーケティングのためには、SEOや顧客データをもとに定期的なコンテンツの見直しを行うことが重要です。本記事を参考に、ぜひ効果的なオウンドメディアマーケティングを目指してみてください。