コンテンツマーケティングの戦略を立てる手順とは? 運用開始までのスケジュールを解説
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コンテンツマーケティングは、現在多くの企業が導入しているマーケティング手法です。自社が提供する商品やサービスを多くの顧客に認知してもらい、購買につなげたい企業はぜひ導入を検討してみましょう。
しかし、はじめてコンテンツマーケティングを手がけるにあたっては、コンテンツ公開までの手順やスケジュールはなかなか把握しづらいものです。この記事では、コンテンツマーケティングの戦略を立てる手順やスケジュール管理の方法を詳しくご紹介します。
コンテンツマーケティングについてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
コンテンツマーケティング戦略の重要性
コンテンツマーケティングを行ううえで、戦略を立てることは非常に重要です。何の戦略もなしにSNSやブログをはじめても、期待している効果は出にくいでしょう。コンテンツマーケティングは、中長期的なスパンで継続して効果を得るための戦略が必要です。なぜ戦略が重要なのかを解説します。
顧客行動の変化
現在、インターネットやスマートフォン、SNSなどの普及により、顧客が商品やサービスを見つけて購買にいたるまでのプロセスが多様化しています。広告で商品やサービスをアピールするだけでは集客できない時代です。顧客が実際に商品やサービスを購入するまでの行動的・心理的変化についてわかりやすく表したものを、購買行動モデルといいます。
時代に即した購買行動モデルを正しく理解することは、コンテンツマーケティングの戦略を立てるうえで欠かせません。例えばインターネット時代の購買行動モデルのひとつにAISCEAS(アイシーズ)があります。
・A…Attention(認知)広告などで商品・サービスを知る
・I…Interest(興味・関心)商品・サービスについて興味・関心を持つ
・S…Search(検索)商品・サービスについての情報をインターネットで検索する
・C…Comparison(比較)他の商品・サービスと比較する
・E…Examination(検討)複数の商品・サービスの中から欲しいものを検討する
・A…Action(行動)商品・サービスを購入・利用する
・S…Share(共有)商品・サービスについてのレビューを投稿したりSNSなどで共有したりする
顧客がどの段階に位置しているのかによって、最適なアプローチ方法が変わります。認知や興味・関心の段階では、ビジネスブログやオウンドメディアなどで正確に自社商品の魅力をアピールできるとよいでしょう。比較・検討では、自社の商品のメリットや価格、使いやすさなどの情報を知ってもらうために、事例集や資料を提供したりセミナーを開催したりといった積極的なアプローチとサポートが最適です。
他にもSNS中心のビジネスの購買行動モデルには、VISAS(ヴィサス)、コンテンツマーケティング時代における購買行動モデルにはDECAX(デキャックス)などがあります。あらゆる購買行動モデルにそって戦略を立てると効果的です。
リソースの確保
コンテンツマーケティングの施策には、オウンドメディアやホワイトペーパー、メールマガジン、動画コンテンツなどさまざまな種類があります。どのチャネルに力を入れるのか、どういった戦略を立てるのかによって、必要な人的・物的リソースが異なります。
コンテンツマーケティングの運用には、多くのリソースが必要です。運用をはじめてから人手が足りない、といったことがないよう戦略にそったリソースを確保しておきましょう。
あらかじめコンテンツマーケティング専門のプロジェクトチームを作ったほうが、コンテンツの方向性が統一されます。その他、無理のない予算組みやスケジューリングも意識しておきましょう。
ゴールが明確になる
コンテンツマーケティングをはじめるにあたって、最終的なゴールを明確にしておくと、社内での認識が統一できます。先にご紹介した購買行動モデルを参考にして、将来的に見込み顧客となり得るユーザーとの接点からその後の行動までを予測した戦略の立案に役立てましょう。
企業が求めるゴールには、商品を購入してもらう、サービスを利用してもらう、などさまざまにありますが、あくまでも顧客視点に立って施策を打ち出すことが大切です。ゴールが明確になれば、プロジェクトチームのモチベーションもアップします。
▼コンテンツマーケティングや、オウンドメディアの戦略については、あわせてこちらの記事もご覧ください。
コンテンツマーケティングのスケジュール①目標設定
コンテンツマーケティングをはじめるうえで、最初に設定しておきたいのが目標です。現状、自社が抱えている問題点を、顧客アンケートや社員へのヒアリング、市場・業界動向のリサーチなどから洗い出します。課題がまとまったらその課題を解決するための施策として、コンテンツマーケティングの目的や目標を決めるとよいでしょう。
目標設定に必要なポイントについて解説します。
KGI
KGI(重要目標達成指標)は、Key Goal Indicatorの略で企業活動における定量目標を指します。コンテンツマーケティングでは目標やゴールとして捉えるとわかりやすいでしょう。具体的には、次のようなものがKGIとして設定されることが多いです。
・売上高
・リード数
・新規ユーザー数
コンテンツマーケティングでは運用の目的を明確にしたうえで、数値化しやすいKGIを設定するとよいでしょう。
KPI
KPI(重要業績評価指標)は、Key Performance Indicatorの略で、先にご紹介したKGIを達成するための指標です。最初にKGIを設定してから、KPIの設計に取り組むとよいでしょう。
KGIを達成するためには、オウンドメディアの検索流入数やPV、検索順位、資料のダウンロード数、SNSでのシェア数など、さまざまな指標が考えられます。しかし、それらすべてをKPIに設定しても運用開始後に効果を測定するのに時間がかかります。KPIはあくまでも「重要業績評価指数」ですから、重要なものをピックアップして設定しましょう。
またコンテンツマーケティングの運用期間や顧客のフェーズによって、KPIを定期的に見直すことも必要です。KGIを達成するために試行錯誤しながら、見直しや改善を行いつつ設定していくのもよいでしょう。
SMARTを意識
SMARTとは、目標設定のために必要な要素をまとめたものです。KGIやKPIを設定するときはSMARTを意識するとよいでしょう。
・S:Specific(具体的な)…チーム間で認識のズレが起きないよう具体的でわかりやすい目標
・M:Measurable(測定可能な)…成果が測定しやすい定量的な目標
・A:Achievable(達成可能な)…現実的で達成が可能な目標
・R:Related(関連した)…コンテンツマーケティングに関連した目標
・T:Time-bound(期限を定めた)…達成する期限を定めた目標
抽象的な目標は成果を測定しにくいため、コンテンツマーケティングには設定しないようにしてください。
コンテンツマーケティングのスケジュール②ペルソナの設定
目標が決まれば、ペルソナの設定に進みます。ペルソナとは、自社の商品やサービスを実際に利用してくれそうと考えられる顧客の特徴を一人の人物像に作り込んだものです。言い換えれば、架空のユーザー像です。ユーザーの年齢や性別、職業、収入、居住地、家族構成、教育レベル、出身地などの細かな属性を設定します。その他、次のようなライフスタイルの特性も決めておくとよいでしょう。
・趣味
・嗜好
・娯楽
・日課
・人生観
・悩み
・ファッション傾向
・情報収集の手段(雑誌、インターネット、テレビなど)
・利用しているSNS
詳しく人物像を作ることで「誰に向けて」「どんな方法で」「どのタイミング」でアプローチを行うのか、戦略が立てやすくなります。また顧客視点や心理、行動の考察に役立ちます。ペルソナを設定するには、次の手順で進めていくと効率的です。
1.情報収集
2.情報の整理
3.具体的な人物像を作る
それぞれについて詳しく解説します。
1.情報収集
詳細なペルソナを構築するにあたっては、情報収集からはじめます。具体的には次のような情報が役立ちます。
・顧客へのアンケート・インタビュー
・商品・サービスに対する口コミ・レビュー
・SNSの反応
・社内データ
・政府や専門機関からのデータ
情報収集するときには、正確性を重要視しましょう。アンケートやインタビューを行う場合は、できるだけ多くの人に意見を聞くとよいでしょう。社外のデータを参考にするときには、信頼できる情報かどうかを見極めることが大切です。競合他社の商品・サービスのレビューなどを参考にしてもよいでしょう。
2.情報の整理
ペルソナ設計に必要な情報が集まれば、その膨大なデータを整理・分析します。大変な作業ですが、よりリアルなペルソナ設計には欠かせません。デモグラフィックデータとサイコグラフィックデータの二つに分類するとよいでしょう。
デモグラフィックとは、人口統計学を指し、年齢や性別、職業、収入、居住地などが該当します。一方のサイコグラフィックは、心理学的要因を指し、先にあげた趣味や嗜好、価値観など、顧客の内面的な要素です。
ペルソナを設定するうえでどちらも欠かせない要素であり、特にサイコグラフィックデータは、顧客行動や心理を予測するのに役立ちます。
3.具体的な人物像を作る
情報の整理ができれば、いよいよ具体的な人物像を作りあげていきます。整理したデータから、自社の商品やサービスに興味を持ってくれそうな人物の共通項を探しましょう。例えば働く女性に向けたファッションアイテムを販売している企業なら「仕事を持つ女性」や「ファッションに興味がある」などの共通項を見つけましょう。
そこからストーリーを作っていき、その女性の年齢や収入、家族構成、趣味など順に深堀りしていくのです。最終的には誰もがイメージしやすい一人の人物像を作りましょう。フレームワークや図式、画像などを使ってペルソナシートを作っておくと、チーム間で共有しやすくなります。
ただし思い込みなどで、企業側に都合のよいペルソナ設計をすることは避けましょう。例えば、働く女性でファッションに興味があるからといって、すぐに自社の商品を買ってくれるわけではありません。ファッションアイテムはどういう方法で購入しているのか、どんなSNSを利用しているか、などでも顧客行動は変わります。
まずは商品を認知してもらえる方法を探るためにも、適切なペルソナ設計をおすすめします。また、コンテンツマーケティングの運用をはじめてみて、設計したペルソナと現実のズレが生じた場合は、ペルソナの見直しを行いましょう。
▼ペルソナについては、あわせてこちらの記事もご覧ください。
コンテンツマーケティングのスケジュール③カスタマージャーニーマップの作成
次に設計したペルソナをもとに、顧客行動を図式化したカスタマージャーニーマップを作成しましょう。図の横軸には次のように顧客の段階を書き出します。
・無関心
・認知・興味
・情報収集
・比較検討
・導入可否決断
・リピート
次に縦軸には次のような項目を設定します。
・行動
・思考
・感情
・タッチポイント
横軸と縦軸を設定したあとは、それぞれのフェーズにおけるペルソナの行動や思考を埋めていき、そこから最適なタッチポイントを決めます。無関心や認知・興味の段階では、SEO記事などで認知してもらい、正確で有益な情報を提供します。顧客の関心を得られれば、より商品やサービスに近い情報を提供するとよいでしょう。あくまでも一例ですので、自社のマーケティング戦略や商品・サービスに合ったアプローチ方法を、カスタマージャーニーマップに反映させます。ペルソナの行動や心理を分析して、最適なときに最適なアプローチができるように設計しましょう。
またペルソナ設計と同様に、カスタマージャーニーマップも顧客行動が予想とは違っていた場合には修正が必要です。最初から完璧を目指さずに少しずつブラッシュアップしていくのもひとつの方法です。カスタマージャーニーのテンプレートや作成ツールなどを使うのもよいでしょう。データ化しておけば、社内で共有できて便利です。
コンテンツマーケティングのスケジュール④運用体制の構築
ペルソナの設計やカスタマージャーニーマップの作成が終われば、ほぼ戦略は決まった状態です。コンテンツマーケティングを運用するための運用体制の構築を進めましょう。具体的には人的リソースの確保です。記事1本を公開するだけでもライティング、編集、校正、校閲などの担当者が必要になるため、きちんと人材を確保して担当を決めておきましょう。
企業の規模やコンテンツマーケティングの規模によって必要な人材は異なりますが、例として次のような役割を持つリソースが確保できれば理想的です。
・CCO(チーフ・コンテンツ・オフィサー)…コンテンツマーケティングにおける最終責任者で、予算管理、外部リソースとの契約などを行う。
・編集長…コンテンツ制作の責任者で、コンテンツの編集やスケジュール管理を行う。
・コンテンツクリエーター…ライターやデザイナー、フォトグラファーなどコンテンツ制作に直接的に関わる。社内に人材がいない場合は、外部に委託することが多い。
・ソーシャルメディア責任者…TwitterやInstagram、Facebookなどの責任者。企業の公式メディアを運営して、ユーザーと接点を持つ。
・アナリスト…コンテンツへのアクセス数や流入キーワード、サイト訪問者の行動などを分析して改善につなげる。
コンテンツクリエーター以外の人材については、社内から選出するほうが連絡事項などもスムーズに伝わります。
コンテンツマーケティングのスケジュール⑤コンテンツ公開までのスケジュールを決める
戦略の立案やリソースの確保などができれば、実際にコンテンツを制作しましょう。コンテンツを公開する日程を決め、そこから逆算して作業を進めるとよいでしょう。コンテンツマーケティングの運用には、社内外の多くの人が携わっているため、それぞれの予定管理が重要です。
まずはコンテンツ公開までの工程をすべて洗い出し、無理のないスケジュールを組みましょう。例えば、オウンドメディアなどのWEBコンテンツ制作における一連の流れは次のとおりです。
1.コンテンツの企画立案(コンテンツのテーマ、内容、構成、キーワード選定など)
2.コンテンツのデザインを決める
3.取材依頼
4.取材・撮影など
5.記事コンテンツの執筆
6.原稿や写真、デザインのチェック
7.コンテンツ公開
WEBサイトのデザインや執筆を外部に依頼する場合は、連絡事項や修正対応などの工程が増えます。場合によっては、企画立案からコンテンツ公開までに2〜3ヶ月を要することもあるでしょう。
スムーズにコンテンツ公開まで進むよう、スケジュールの組み方のポイントをご紹介します。
エディトリアルカレンダーの活用
多くの工程が必要なコンテンツマーケティングのスケジュール管理には、エディトリアルカレンダーの活用がおすすめです。エディトリアルカレンダーとは、コンテンツ公開までのスケジュール管理に役立つツールで、カレンダーにコンテンツ制作に関わる予定や進捗状況を入力します。
エディトリアルカレンダーには次の2種類があります。
・月間エディトリアルカレンダー…コンテンツの内容・タイトル・公開日などの管理が月単位で行える。
・年間エディトリアルカレンダー…中長期的に予定管理するのに役立つツール。季節ごとのイベントやキャンペーンの管理にも役立つ。
これらのエディトリアルカレンダーをチームで共有すれば、作業の進捗状況が一目でわかり担当者のスケジューリングがしやすくなります。また年単位でスケジュール管理をしておけば、お正月やクリスマス、バレンタインデーなど季節のイベントに向けて早いうちから企画が立てられます。
スケジュールは長めに設定
いずれの工程においても、スケジュールは長めに設定しておくと予定外のトラブルやミスがあった場合でも対処できます。特に社外の人材に仕事を依頼する場合は、余裕を持たせたスケジュールにしておきましょう。工程ごとに期日を設定しておくと、スムーズに進みます。
コンテンツマーケティングをはじめて間もないころは、スケジューリングがうまくいかないこともあるでしょう。各工程にどれくらいの日数を要したのか、フィードバックなどを行い、改善することも必要です。
コンテンツの更新頻度
コンテンツの更新頻度もスケジュールに大きく関わってきます。一説にはオウンドメディアの場合、1日1回コンテンツを更新するのがよいとされています。しかし内容の薄いコンテンツでは、検索エンジンに評価されない可能性が高く、読者の興味もひきません。あくまでも読者にとって有益で上質なコンテンツが理想的です。
制作するコンテンツが多ければ、当然スケジュールも過密になってくるでしょう。外部にコンテンツ制作を依頼する、新しい人材を採用する、などの方法でスムーズにコンテンツ公開ができるようにしましょう。
コンテンツマーケティングのスケジュール⑥効果測定
コンテンツを公開すれば、それで終わりではありません。立案した戦略どおりの成果が出ているのか、効果を測定しましょう。KPIとして設定した指標に達しているか、サイトの訪問者数や平均滞在時間、SNSのシェア数などを分析しましょう。分析ツールなどを利用すると、正確な分析結果が出せて便利です。
効果が出ていなければ、新たな施策を打ち出したりペルソナやカスタマージャーニーマップの見直しを行ったりなどで改善を行います。効果測定と改善を繰り返して、コンテンツマーケティングを成功に導きましょう。
▼コンテンツマーケティングの効果測定や分析については、こちらの記事もぜひご覧ください。
スケジュール管理でコンテンツマーケティングを効果的に運用しよう!
コンテンツマーケティングの戦略の重要性と運用までのスケジュールをご紹介しました。コンテンツを公開するまでには、多くの時間と労力が必要です。また設定した目標を達成するまでには、長期間を要する可能性もあります。
コンテンツの内容も大切ですが、制作や公開までのスケジュール管理も非常に重要です。上手にスケジュールを管理して、効果的に運用していきましょう。