カスタマージャーニーとは? ペルソナとの違いやマップ作成方法を解説
マーケティング担当者の方は、「カスタマージャーニー」や「ペルソナ」などの用語を聞く機会が多いのではないでしょうか。どちらもマーケティングの重要な手法であり、顧客理解に欠かせません。顧客心理を理解すれば、効果的なマーケティング施策の立案が可能です。この記事では、以下の内容を解説します。
- ・カスタマージャーニーとペルソナの違い
- ・カスタマージャーニーのメリットと注意点
- ・カスタマージャーニーマップの作成方法
マーケティング戦略でお悩みの方は、ぜひご覧ください。
カスタマージャーニーとは?
カスタマージャーニーとは、顧客が商品を知ってから購買するまでのプロセスを意味します。廃棄や再購入といった購買後の行動を含める場合も。直訳「顧客の旅」の通り、顧客の思考や行動を旅のように時系列順にまとめる手法です。カスタマージャーニーを書き起こした図表を、「カスタマージャーニーマップ」と呼びます。
カスタマージャーニーと関連するユーザーシナリオ
顧客の実際の行動プロセスを表すカスタマージャーニーですが、関連する用語に「ユーザーシナリオ」があります。ユーザーシナリオとは、顧客の理想的な行動プロセスを描いた台本です。
顧客は、ユーザーシナリオ通りには行動しません。用意した顧客接点(タッチポイント)を通らなかったり、購入目前でやめたりします。こうした実際の行動を反映したカスタマージャーニーとユーザーシナリオのギャップを把握することで、具体的な改善策の立案が可能です。
カスタマージャーニーとペルソナの違い
カスタマージャーニーを構築する際は、「ペルソナ」が必須になります。ペルソナとは、商品やサービスを利用する架空のユーザー像です。年齢や性別、職業、趣味、生活、商品・サービスとの接点など、細かい設定を練り上げて作成します。この架空ユーザーの動きを可視化したものがカスタマージャーニーです。
カスタマージャーニーは、ペルソナをもとにして顧客の行動・思考プロセスを探っていきます。つまり、ペルソナの設定があいまいだと、カスタマージャーニーも一貫性が欠けてしまうわけです。そのため、ペルソナはできる限り詳細に設定する必要があります。
ペルソナとターゲットの違いに注意
ペルソナとよく似ている概念に、「ターゲット」があります。ターゲットとは、「20代男性」「40代主婦」などの大まかなグループで、詳細なイメージは設定しません。対するペルソナは、ターゲットを掘り下げて細かな人物像を設定しています。
なぜわざわざペルソナを作るのかと言えば、マーケティングの方向性が定めやすいからです。たとえば、「20代女性」とするターゲットのみだと、社員ごとに思い描く人物像は異なります。それぞれの人物像に合わせてマーケティング戦略を練ってしまうため、最終的な方向性がなかなか定まりません。共通のペルソナがあれば、マーケティングの方向性を素早く決定できます。
ターゲットとペルソナは混同されがちですが、設定範囲が大きく異なる別物です。カスタマージャーニーを策定する際は、ターゲットではなくペルソナを設定しましょう。
関連記事「カスタマージャーニーマップに欠かせないペルソナの作成方法」
カスタマージャーニーの必要性とは? 求められる理由3つ
カスタマージャーニーは、なぜ必要とされるのでしょうか。求められる理由を以下3つに分けてみましょう。
- 1.インターネットやSNS普及による接点の多様化
- 2.顧客体験(CX)の重要性が増した
- 3.ツール発達により高精度なデータログが取得可能に
順番に説明します。
1.インターネットやSNS普及による接点の多様化
現代の顧客と企業の接点は、インターネットやSNSの普及により多様化しています。インターネット発達前の顧客接点は、店頭やテレビCM、街頭広告などの少ない媒体に限られていました。企業側のマーケティングの選択肢も少なかったため、わざわざ顧客の行動プロセスを分析して接点を明らかにする必要がなかったわけです。
しかし、インターネットの発達により、企業のWebサイトやWeb広告、動画配信、個人ブログ、SNS、口コミサイトといった複数の接点が登場します。広告塔になるようなインフルエンサーに限らず、一般消費者までもが企業と顧客の接点を生み出すようになりました。
顧客接点が複雑かつ多様化したことで、企業側のマーケティングの選択肢も急増します。数ある選択肢から適切なマーケティングを見極めるためには、「どのような顧客接点があるのか」「どこに宣伝広告費をかけるか」などの顧客分析が必要です。カスタマージャーニーは、顧客分析の手法として重要視されています。
2.顧客体験(CX)の重要性が増した
顧客体験(CX)の重要性が増した点も、カスタマージャーニーが必要とされる理由の1つです。インターネットの普及は、企業だけでなく顧客の選択肢も広げました。顧客はネット上で数多くの類似商品を簡単に比較できるため、単なる商品提供だけでは生き残るのが難しい時代となりつつあります。他社との差別化を図るために肝心な要素が、顧客体験です。
商品・サービスを知ってから購入後まで含む顧客体験が向上すれば、良い口コミの拡散やリピーター獲得に繋がります。顧客体験を高めるためには、顧客の商品認知から購入後のプロセスにおいて、どのような感情や思考を辿るか整理・検証する必要があります。そこで役立つのが、カスタマージャーニーです。カスタマージャーニーマップでペルソナの行動・思考を可視化できるため、フェーズごとに顧客体験の検証や整理を行えます。
3.ツール発達により高精度なデータログが取得可能に
デジタルツールの技術進歩も、カスタマージャーニーの必要性に関わっています。発達したデジタルツールが普及したことで、顧客の行動ログを高精度かつ詳細に把握できるようになりました。具体的には、Webサイトへの流入元、流入数、滞在時間、Web広告の効果測定などのデータです。
インターネットの発達前と比べて取得できるデータの量・質はともに向上しており、企業はさまざまなマーケティングが可能になりました。また、有料ツールでデータを取得している場合、費用に見合ったマーケティング効果が求められます。そのため、膨大なデータを活かすマーケティング手法の1つとして、カスタマージャーニーが注目されているわけです。
関連記事「なぜカスタマージャーニーマップが必要なの? その目的や作成方法を徹底解説!」
カスタマージャーニーの活用メリット3つ
カスタマージャーニーを活用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。次の3つをご覧ください。
- 1.顧客目線の施策立案
- 2.言語化されない真のニーズや購買心理を明らかにできる
- 3.マーケティング戦略のスムーズな意思決定
1つずつ解説します。
1.顧客目線の施策立案
カスタマージャーニーを活用すると、顧客と企業側の目線を合わせやすくなります。カスタマージャーニーは、顧客の行動だけでなく心理状況も時系列ごとに表すものです。商品の認知段階から購入までの思考プロセスを詳細に分析するため、以下のような顧客目線の施策を立案できます。
- ・顧客に求められている商品またはサービス
- ・自社製品の魅力が正確に伝わる広告、反対に購買層が離脱してしまう広告
- ・購入までのルートが分かりやすいWebサイト
- ・購買層が最も多い顧客接点
企業が顧客目線を理解せずミスマッチなマーケティングを行うと、本来は顧客のニーズに応えられていても購買に至らない恐れがあります。自社の商品・サービスを届けたい顧客の心理を理解し、適切なマーケティングを実行することが大切です。
2.言語化されない真のニーズや購買心理を明らかにできる
顧客にアンケートをとっても、顧客がなんとなく抱いている要望や不満は上手く言語化されません。しかし、言語化されない真のニーズを拾い上げられたのなら、新商品の開発に大いに貢献するでしょう。カスタマージャーニーを用いれば、顧客の真のニーズを明らかにしやすくなります。
カスタマージャーニーマップを作成する際は、顧客の購買まで、または購買後の商品利用時の思考を分析します。時系列に沿って顧客の行動・思考を仮説立てて検証することで、言語化されないニーズや不満点の理解が可能になるでしょう。
3.マーケティング戦略のスムーズな意思決定
マーケティング戦略を速やかに意思決定できる点も、カスタマージャーニーのメリットです。1つの商品やサービスには、営業部や開発部、マーケティング部などの複数部門が関わっています。マーケティングの最適化には、顧客像や顧客のニーズ・行動プロセスといった認識の統一が欠かせません。カスタマージャーニーがあれば、社内認識の統一が可能です。
部門間の認識にずれがなくなるため、施策の優先順位決定といった意思疎通が容易になります。マーケティング戦略をスムーズに進めたいのであれば、カスタマージャーニーを有効活用しましょう。
カスタマージャーニーマップの作成手順5つ
カスタマージャーニーマップの作成手順を、以下5つに分けて解説します。
- 1.ペルソナの作成
- 2.商品とマップのゴールを定める
- 3.ペルソナの行動の仮定・検証
- 4.行動をフェーズ分けしたフレームワークを策定
- 5.情報収集をしてフレームに落とし込む
詳しい作り方を紹介しますので、マップ作成の参考にしてみてください。
1.ペルソナの作成
まずは、購買客となり得るペルソナの設定を明確に作り上げます。企業の理想通りに行動してくれる人物にならないよう注意し、リアリティのある人物像を設定しましょう。ペルソナの設定項目は、主に以下の通りです。
- ・年齢、性別、職業、年収、家族構成、居住地などの基本プロフィール
- ・性格、趣味嗜好、消費傾向、ライフスタイル
- ・よく見るWebサイ
- ・インターネットを使う時間帯
- ・最も使うデバイスやSNS
上記以外にも、できる限り多くの設定を練り上げてください。施策方針に幅を持たせるため、複数のペルソナを作っても良いでしょう。
2.商品とマップのゴールを定める
販売したい商品やサービスを決定し、カスタマージャーニーマップのゴールを定めます。スタートはほとんどの場合「商品の認知」ですが、ゴールは多岐に渡ります。商品の購入、資料請求、問い合わせ、リピート購入、良い口コミの投稿などの明確な着地点を設定してください。
ゴールが変わると実行すべきマーケティング施策も異なるため、具体的に考える必要があります。マップ作成途中でゴールを変えてしまうと、作業を一からやり直さなくてはいけません。途中で変更しないよう、最初にゴールを確定させましょう。
3.ペルソナの行動の仮定・検証
ペルソナとマップのゴールを明確にしたら、ペルソナの行動を仮定して検証します。まず、ペルソナがゴールまでに取る行動の仮説を立ててください。ゴールが「商品の購入」ならば、ペルソナが商品を買うまでにどのように行動するのか順序立てて仮定します。下記のように、細かく行動を挙げてみましょう。
- ・web広告を見た、YouTuberの商品紹介を見た
- ・広告をクリックした、商品を検索した、口コミを確認した
- ・公式通販サイトで購入、Webサイトで情報確認し実店舗で購入
他にも、商品認知後のリサーチ方法や、購入を踏みとどまるパターンなど、思いつく限り仮説を立てます。BtoBの場合は、稟議から購入までのステージを考えましょう。アンケートやインタビューで仮説を検証し、大きくずれていれば修正します。ただし、この段階の検証に時間をかけ過ぎるとマップ完成が遠のくため、簡易的な検証で充分です。
4.行動をフェーズ分けしたフレームワークを策定
ペルソナの行動を「商品の認知」「リサーチ」などのフェーズに分け、マップのフレームワークを作ります。フレームワークの横軸にペルソナの行動フェーズを置く形が一般的です。
行動フェーズは全て独自に作っても問題ありませんが、購買行動モデルを参考にする方法もあります。有名な参考例は、インターネット購買行動モデル「AISAS(アイサス)」です。AISASの行動フェーズは、「注目・認知」「興味関心」「検索」「行動(購買)」「共有」の5つに分かれています。AISASに独自項目を加えても良いでしょう。
横軸の行動フェーズを決定したら、縦軸を決定します。縦軸に置くのは、「チャネル」「顧客接点」「行動」「感情・思考」「課題・施策」などの項目です。
5.情報収集をしてフレームに落とし込む
フレームワークが完成したら、本格的な情報収集をしましょう。ツールで取得したデータ分析などの定量調査、ヒアリングやユーザーテストによる定性調査を行います。情報をもとにして、「商品を認知した顧客接点」や「商品を検索時の顧客の感情」など、横軸と縦軸が交わるフレームの中身を埋めていきます。全てのフレームが埋まれば、マップ完成です。
また、マップ完成後にこれまでと異なる視点から、マップを俯瞰してみても良いでしょう。思いがけない発想が生まれ、新たなカスタマージャーニー作成の手がかりとなるかもしれません。
関連記事「カスタマージャーニーマップを作成する6つの手順と活用事例を解説」
カスタマージャーニーの注意点3つ
カスタマージャーニーをマーケティングに取り入れる場合、事前に下記3つの注意点を把握しておきましょう。
- 1.企業に都合の良いペルソナを作らない
- 2.マップは複数人で作成する
- 3.完成したマップの定期的な見直し
どういった点に注意したほうが良いのか、具体的に説明します。
1.企業に都合の良いペルソナを作らない
1つ目の注意点として、企業に都合の良いペルソナを作らないようにしましょう。理想のペルソナを設定すると、その後のカスタマージャーニーマップが現実とかけ離れてしまうからです。具体的な例を挙げると、以下のようなペルソナが当てはまります。
- ・他社製品より自社商品が好き、価格が高くても自社製品を選ぶ
- ・Web広告に興味関心がある、広告動画を最後まで見ている
- ・拡散効果の高いインフルエンサー
- ・口コミサイトを見るが良い口コミしか参考にしない
こういったペルソナをもとに作成したカスタマージャーニーマップも、「この記事から資料請求してくれるはず」「良い口コミを広めてくれるはず」と理想を詰め込んだものになります。ペルソナを作る際は、アンケート結果などの事実にもとづく現実的な設定にしましょう。
2.マップは複数人で作成する
カスタマージャーニーマップは、複数人による作成をおすすめします。1人で作ると、個人的な感性やバイアスの影響が強く出てしまうためです。できる限り多いメンバーで作成するほど、客観的な視点を獲得しやすくなります。
話し合いをする際は、ホワイトボードやマインドマップを活用すると良いでしょう。意見が可視化されるため、思考が飛躍している部分や願望が混ざっている箇所を見つけやすいです。複数のメンバーで修正・検証を繰り返して、顧客に寄り添ったカスタマージャーニーマップを作成してみてください。
3.完成したマップの定期的な見直し
カスタマージャーニーマップは、作って終わりではありません。情報収集や効果検証の結果に合わせて見直す必要があります。また、顧客接点の流行、新たな購買チャネルやニーズ、経済状況の変化があれば、現実とマップのずれを修正しましょう。
また、カスタマージャーニーマップが、現在の状況と根本的にずれてしまうケースも考えられます。あまりにも乖離した場合は、修正せず新しいマップを作ったほうが良いでしょう。修正していないマップを何年も使い続けず、常に最新状態を保つことが望ましいです。
関連記事「カスタマージャーニーが古いと言われる理由は? ペルソナとマップの作成方法も解説」
カスタマージャーニーマップでマーケティングを最適化しよう
企業と顧客の接点が多様化した現代において、マーケティングは重要な役割を担っています。どれほど素晴らしい商品・サービスを開発しても、適切なマーケティングを行わなければ購買層には届きません。
最適なマーケティング戦略を立案・実行したいのであれば、カスタマージャーニーマップを作成してみてはいかがでしょうか。カスタマージャーニーマップを作る際は、紹介した作成手順をぜひご活用ください。