カスタマージャーニーが古いと言われる理由は? ペルソナとマップの作成方法も解説

近年、「カスタマージャーニーは古い」と耳にする機会が多くなりました。カスタマージャーニーは、顧客の購買プロセスの可視化や顧客理解を深めるのに役立つ施策です。多くの企業が実施するカスタマージャーニーですが、果たして本当に古い施策となっているのでしょうか? 本記事では、カスタマージャーニーが古いと言われる理由や必要性、作成ポイントなどを解説します。

カスタマージャーニーとは

カスタマージャーニーマップ

カスタマージャーニーとは、製品やサービスを購入するペルソナを作成し、ペルソナの動きや思考を時系列で可視化したマップです。カスタマージャーニーでは、主に「認知→興味関心→比較検討→購入」の流れで顧客行動や感情などをまとめます。

ペルソナの流れを可視化することで、企業と顧客の接点「タッチポイント」の洗い出しや最適なチャネルで適切なメッセージの発信などが可能になります。

カスタマージャーニーが広まった背景として、顧客行動の複雑化が挙げられます。テレビや新聞、雑誌が主要メディアだった数十年前は、タッチポイントの想定だけで対応できました。しかし、現代の顧客はWebサイトやSNSなど数多くのチャネルを横断し、認知から購買までしています。

カスタマージャーニーを作成すれば、複雑化する顧客行動の可視化と分析が可能となり、最適なチャネルで最適なアプローチを実施できるのです。

カスタマージャーニーについては、以下のページでも詳しくご紹介しています。

カスタマージャーニーが古いと言われる3つの理由

ホワイトボードを眺める男性

マーケティング担当者にとってカスタマージャーニーは必須知識でした。しかし、最近は以下3つの理由によりカスタマージャーニーは古いと言われています。

  • ・顧客行動の変化
  • ・顧客の意思決定にかかる時間
  • ・カスタマーサクセスの広まり

カスタマージャーニーが古いと言われるそれぞれの理由について解説します。

1.顧客行動の変化

カスタマージャーニーが古いと言われる大きな要因は、スマートフォンやSNSの普及で消費者の行動が変化したからです。例えば、SNS上で話題の製品を見かけたことをきっかけに、製品サービスの購入や登録をした経験がある方は多いのではないでしょうか。

消費者は買いたいと思った商品を見つけた瞬間に、スマートフォンで購入するようになりました。Googleは、このような瞬発的に購入意欲を得て、スマートフォンで購入を終わらせる消費行動を「パルス型消費行動」と呼んでいます。

パルス型消費行動の特徴は下記の通りです。

  • ・未認知の製品の購入に躊躇しない
  • ・購入する商品を決めずに店やECサイトを訪問する
  • ・スマホで偶然認知した商品をその場で購入する

これらの特徴からわかるのは、顧客自体が予期していない商品サービスの購入や登録をする機会が多くなったことです。つまり、パルス型消費行動には商品の認知から始まり情報収集や検討してから購入する従来のカスタマージャーニーが通用しなくなりました。それゆえに、カスタマージャーニーは古いと言われます。

2.顧客の意思決定は一瞬のうちに行われる

認知から購入までの流れ

BtoCビジネスの場合、顧客の意思決定は数分のうちに終了します。例えば、ECサイトで電動歯ブラシを購入するとしましょう。顧客は検索結果一覧に表示された複数の電動歯ブラシの中から、気になる製品ページをクリックします。製品詳細や口コミなどを確認したのち、購入ボタンをクリックするのです。

この一連の流れは数分で終了します。つまり、たった数分のうちにカスタマージャーニーにおける「認知→興味関心→比較検討→購買」までが実施されているのです。

このことから、カスタマージャーニーのフェーズで顧客行動を捉えるのには限界があると言えます。カスタマージャーニーに固執すると、施策の硬直化へとつながります。

3.カスタマーサクセスの広まり

テクノロジーの発展で製品の模倣が容易にできるようになった現代、製品機能だけで市場の優位性に立つのは難しいです。かつては画期的な発明だったスマートフォンも、今では多くの企業が販売するありふれた存在になっています。このような背景から、顧客に選ばれ続ける企業になるため、顧客ひとりひとりが求める成果を提供する「カスタマーサクセス」が注目を集めています。

カスタマーサクセスに注力すれば、顧客のロイヤルティが高まり、アップセル(より上位の製品を購入してもらうこと)やクロスセル(他の製品を購入してもらうこと)、解約率の改善などにつながります。カスタマーサクセスで重要なポイントは、顧客ひとりひとりに焦点をあてることです。

例えば、同じ製品を利用する場合でも、顧客によって抱える課題は異なります。また、同じ顧客でも時期によって成功の定義は異なるでしょう。カスタマーサクセスでは、顧客ひとりひとりに焦点を当てるため、予め決まったシナリオをなぞるカスタマージャーニーでは対応が難しいです。

カスタマージャーニーの必要性

オフィスで話し合うチーム

それでは何故、今でもカスタマージャーニーは利用されているのでしょうか。その理由は大きく3つあります。

1つめは、顧客理解を深められるからです。適切なカスタマージャーニーを作成すれば、顧客とのタッチポイントの洗い出し、および各タッチポイントにおける顧客の行動や感情を正しく理解できます。つまり、顧客目線で考えられるようになるため、有効なチャネルの把握や施策の立案が可能です。

2つめは、カスタマーサクセスの成功には顧客目線が欠かせないからです。カスタマージャーニーで、各タッチポイントにおける顧客心理や行動を理解できれば、顧客が求める価値を特定できます。また、顧客行動の全体の流れを俯瞰すると、各タッチポイントの役割や伝えるメッセージの最適化ができます。

3つめは、カスタマージャーニー通りに行動する顧客がいるからです。消費者行動は多様化こそしていますが、従来のカスタマージャーニー通りに行動する顧客は多数います。特に高額商材を取り扱い、多くの意思決定者が関わるBtoB企業では、カスタマージャーニー通りに動く顧客は多いです。

これからのカスタマージャーニーの考え方

付箋が張られたホワイトボード

今でもカスタマージャーニーは有効な施策ですが、これからは考え方をアップデートする必要があります。

まずはマーケティング担当者たちの間で、顧客行動が多様化し、顧客の感情や行動はリアルに変化していることを共通認識として持ちましょう。このことを意識するだけで、カスタマージャーニーに縛られるリスクはなくなります。

そして、これからのカスタマージャーニーでは柔軟なシナリオ修正力が求められます。顧客がカスタマージャーニーのシナリオから外れた行動をした場合、シナリオ修正をしなければ、適切な施策にはつなげられません。

顧客属性や行動履歴などを基に、シナリオから外れた顧客の行動を予測し、次のタッチポイントや行動を予測しましょう。顧客行動の予測精度を高めるためにも、日頃からCRMやMAツールなどで顧客データを収集するのが有効です。

カスタマージャーニーマップの設計手順

ペンと白い紙

ここからは、成果を実現するカスタマージャーニーの設計手順をご紹介します。

  1. 1.顧客理解を深める
  2. 2.ペルソナを作成
  3. 3.タッチポイントの洗い出し
  4. 4.ペルソナの感情をイメージする
  5. 5.分析と改善を繰り返す

1.顧客理解を深める

カスタマージャーニーは、販売する製品やサービスの典型的なユーザー像「ペルソナ」を作成することから始まります。ペルソナ作成前には、徹底的に顧客調査をしなければいけません。

ブレインストーミングや会議で出したアイデアのみで作れるのは、成果につながらない架空のペルソナです。実在する顧客に近いペルソナを作成するためにも、顧客を対象にしたグループインタビューの実施や自社に蓄積した顧客データなどを分析し、顧客理解を深めましょう。

2.ペルソナを作成

顧客理解を深めたところで、ペルソナ作成をします。ペルソナ作成の際は、年齢や性別などのデモグラフィクスは当然ながら、ライフスタイルや価値観、購買動機などのサイコグラフィックまで設定しましょう。

実在する顧客に近いペルソナを作成できれば、各タッチポイントに関連する顧客行動や心理を正確に把握できます。また、作成したペルソナは社内で共有することで、製品サービスのターゲットにしている人物像の統一が可能です。

3.顧客とのタッチポイントを洗い出す

認知から購買に至るまでの過程で、ペルソナが持つであろうタッチポイントを洗い出しましょう。BtoBの場合は、承認から稟議が通って購入に至るまでのステージを切り分けます。

各フレーズにおけるタッチポイントが1つとは限りません。主なタッチポイントとして以下のものが考えられます。

  • ・Webサイト
  • ・SNS
  • ・店舗
  • ・広告
  • ・口コミ

例えば、認知ならWebサイトやSNS、営業活動など複数のタッチポイントが考えられます。タッチポイントを正確に洗い出せれば、顧客がシナリオから外れた行動をしても、柔軟に次の行動を予測できます。

4.ペルソナの感情をイメージする

各タッチポイントにおける顧客の行動や感情を考えます。

例えば、認知フレーズでGoogle検索をした顧客がいると仮定しましょう。Google検索をするということは、顧客はある悩みや課題を解決したいと願っていると分かります。この課題を特定し、それを解決できるコンテンツを提供できれば、顧客の信頼感や購買欲の醸成ができます。

このように各タッチポイントにおける行動と行動に潜む顧客の感情をリストアップします。

 5. 分析と改善を繰り返す

カスタマージャーニーマップは作成して終わりではありません。以下の理由から、カスタマージャーニーは定期的にアップデートする必要があります。

  • ・ターゲットがカスタマージャーニーの通り行動する可能性は低い
  • ・顧客行動や市場状況は日々変わる

カスタマージャーニーの分析と改善の頻度は様々です。例えば、情報が蓄積された段階や大きなマーケティング施策を打つ段階で更新する方法もあります。もしくは、毎月や4半期ごとなど更新頻度を決めておくのも有効です。

定期的に分析と改善を繰り返し、鮮度の高いカスタマージャーニーを維持しましょう。

カスタマージャーニーマップ設計時の注意点4つ

メモを取る男性

カスタマージャーニーマップを設計する際は、以下4つの注意点を意識しましょう。

  • ・目的を見失わない
  • ・顧客行動や市場状況は日々変わる
  • ・ペルソナごとに作成する
  • ・素早く作成する

それぞれの注意点について解説します。

1.目的を見失わない

複雑な顧客行動が原因で、マーケティング担当者はカスタマージャーニーの一部分だけを見てしまい、全体の目的を見失うケースが多々あります。

マーケティング全体の施策

例えば、全体の目的が売上アップや製品の使用率アップだと仮定しましょう。この目標を達成するために、SEO対策やWeb広告、メールマーケティングなどに注力します。各施策は個別の指標に基づいて、数ヶ月から数年に及ぶ期間で最適化されます。長期間に渡り様々な施策を打つ間に、各施策の指標ばかりに注力してしまい、当初の目的を見失ってしまうのです。

当初の目的を見失わないためにも、カスタマージャーニーの一部分だけ見るのではなく、全体を俯瞰してマーケティング戦略の立案と実施をする必要もあります。

2.希望や願望を排除する

都合のよいペルソナは、経営やマーケティング戦略を惑わせます。都合のよいペルソナとは、「このお客様ならこう感じる/行動するだろう」と担当者の希望や願望が混じったペルソナです。

カスタマージャーニーにおけるペルソナは、実在する顧客を反映しなければいけません。そのためにも、顧客インタビューやアンケート調査などをして、顧客の声やアンケート結果のみを反映したペルソナ作成をしましょう。

ペルソナに関する仮説を立てる場合は、仮説が事実にもとづいているかどうかの検証が必要です。基本的には、収集した情報のみをベースにペルソナ作成をしましょう。

3.ペルソナごとのカスタマージャーニーマップを作成する

セグメントによって、顧客の購買プロセスは異なります。例えば、若年層はSNSが認知のきっかけとなるのに対し、高齢者層はSNSではなく新聞や雑誌などのマスメディアが認知のきっかけとなるでしょう。セグメントにより認知から購入までの流れは変わるため、複数のペルソナを用いたカスタマージャーニーは有効です。

カスタマージャーニーマップとペルソナごとのフェーズ

複数のペルソナを作成する場合は、上記画像のように各ペルソナを縦に並べると、タッチポイントや感情などを簡単に比較できます。

4.素早く作成する

顧客行動や市場は常に変化します。作成に時間をかけすぎたあまり、カスタマージャーニーが完成したころには、その有効性を失っている可能性はあります。カスタマージャーニーの作成では、時間をかける部分とそうでない部分を見分けなければいけません。

成功の肝となる顧客理解や顧客感情の想像には時間をかけ、タッチポイントの洗い出しやマッピングなどは素早く実施しましょう。素早くカスタマージャーニーを作成し、分析と改善で徐々に精度を高めるのがポイントです。

カスタマージャーニーは古い施策ではない

顧客行動の多様化やカスタマーサクセスの普及などにより、カスタマージャーニーは古いと言われることが多くなりました。しかし、カスタマージャーニーは古い施策ではありません。

今後のカスタマージャーニーを考える上で重要なポイントは、顧客がシナリオから外れた行動をした際に、次の行動を予測し、最適なシナリオへつなげることです。そのためにも、日頃からMAツールやGoogleアナリティクスなどを用いて顧客データを蓄積するのが有効です。

カスタマージャーニーは、カスタマーサクセスや顧客インサイトの発見に有効なため、必要に応じて活用していきましょう。

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