製造業のコンテンツマーケティングを成功させるWebの手法や戦略とは? 会社の事例も解説
更新日:
製造業の集客方法として、Webサイトなどを活用したコンテンツマーケティングを導入する企業も多くなりました。コンテンツマーケティングでは従来の売り込みとは異なる戦略が求められるため、今まさに具体的な手法が分からず悩む担当者も多いでしょう。
この記事では、製造業のコンテンツマーケティングを成功させるポイントや効果的な手法とともに、製造業の企業のコンテンツマーケティング導入事例を紹介します。自社の技術や製品の効果的なアピールや利益につながるコンテンツマーケティングの実現にぜひ役立ててください。
コンテンツマーケティングについてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
製造業でコンテンツマーケティングを導入するメリット
コンテンツマーケティングを導入する企業は幅広い業種にわたります。製造業の従来のBtoBにおけるマーケティングでは、多くが営業活動によって集客やリーチ獲得、製品の購入を達成してきました。
製造業だからこそ、コンテンツマーケティングが有効な手段となるポイントやシーンも多くあります。製造業がコンテンツマーケティングを導入することで得られるメリットを解説します。
新規顧客の開拓に有効
製造業における販路は既存顧客が多く、新規顧客の開拓がしにくいです。特に中間部材などを製品として取り扱うサプライヤーとしてのメーカー企業の場合、自社製品が店頭に並んでいるわけではありません。市場への露出が少なく認知度が低いことで、どうしても取引は既存顧客に依存しやすくなります。
コンテンツマーケティングは、Web上で自社製品が課題解決やニーズに合致した顧客から発見される可能性があります。意外なところから新規顧客を開拓できるチャンスもあるでしょう。
ニッチ戦略との相性が良い
製造業は限定された特定分野でシェアや利益を獲得するニッチ戦略を展開する企業も多いです。専門性や独自性の高い製品や技術を持つ企業が多いため、知名度や資金面が乏しくても大企業と対等の競争力を発揮できます。
特定のターゲットへの情報発信もできるコンテンツマーケティングは、ニッチ戦略とも相性が良いです。すでにニッチ戦略を展開しているメーカー企業は、マーケティング施策のひとつとして導入しやすいでしょう。
認知度の向上
製造業では、取り扱い製品や技術の認知度が浸透していない中小規模の企業も多いです。コンテンツマーケティングによって定期的に情報発信をすれば、自社や製品の認知度向上にも有効となるでしょう。
あらかじめ自社の認知度を高めておけば、顧客が課題を抱える場面でも「課題を解決してくれるメーカー」として自社が候補に上がる可能性も高いです。
競合よりも優位に立つ
コンテンツマーケティングは、顧客を自社や製品のブランドイメージを確立しファン化にもつながる「ブランディング」に有効です。自社や製品のファンを増やすことで、競合他社よりも優位性を得られるでしょう。
コンテンツを財産として蓄積できる
製造業がコンテンツマーケティングのコンテンツとして制作するものは、専門的で独自性の高いものも多いです。制作したコンテンツは消去しない限り残るため、企業の財産としても残せます。顧客へのフォロー、社内ノウハウの蓄積など集客以外にも価値のあるコンテンツを活用できるでしょう。
製造業がコンテンツマーケティングを導入する目的
製造業がコンテンツマーケティングを導入するおもな目的として「製品のアピール」「技術のアピール」のふたつがあります。目的によってコンテンツマーケティングでの手法や制作すべきコンテンツ、コンバージョンが異なる点に注意が必要です。
製品拡販
メーカーまたはサプライヤーが、自社で製造する製品の認知度向上や拡販目的でコンテンツマーケティングを導入する場合です。競合他社とまだ接触していない顧客がターゲットとなります。
認知度向上や拡販が目的なら、資料のダウンロード、問い合わせなどへリーチさせるためのターゲットへのコンテンツを充実させる必要があります。例としては業界分野に関連する専門用語、製品紹介などです。
技術の認知
メーカーが自社で持っている技術の認知目的でもコンテンツマーケティングは有効です。この場合、ターゲットをこまかく絞らないことで、意外な業種や職種からのニーズが出ることがあります。
技術資料のダウンロードや問い合わせがコンバージョンとなるため、技術を活用した上でのソリューションや支援の提供、事例紹介などのコンテンツを制作していくことになります。
製造業でコンテンツマーケティングをはじめる前の準備
ただコンテンツを制作、Webサイトなどにアップするだけで集客や製品の販路拡大などの成果が出せるわけではありません。製造業の企業がコンテンツマーケティングでの成果を上げるために、やっておくべき準備を解説します。
市場環境分析を行う
すでに競合企業がコンテンツマーケティングを導入し運用している可能性も高いです。コンテンツを閲覧するユーザーの中には、すでに競合他社の製品や技術に対する知識を持っていて、比較検討のために自社のコンテンツを閲覧する場合もあるでしょう。製造業のBtoBマーケティングにおいては、自社の製品および技術が競合他社のものよりも優位性に立つためのコンテンツを提供する必要があります。
コンテンツマーケティングへ活かすために、自社の強みと競合他社との違いを把握するのが重要です。「市場環境分析」を行いましょう。自社の市場、ユーザーが求めるニーズ、競合他社との違いをふまえて調査および分析をすると、自社の強みやユーザー像が見えてきます。自社だけの魅力を伝えるためのコンテンツ制作へ活用できます。
継続的にコンテンツを制作する体制を整えておく
コンテンツマーケティングは継続的にコンテンツを制作、更新して運用していきます。あらかじめコンテンツマーケティングを運用する体制を整えておきましょう。テーマの提案やコンテンツ制作、管理は外注をするか、内製するかなども決めておきます。内製する場合には担当者への負担が集中して、本業への支障がでないようにするなどの取り組みも大切です。
効果計測と改善の体制を整えておく
コンテンツマーケティングは短期的な運用で効果が出る可能性は低く、長期的な運用が必要です。ただコンテンツを更新するだけでなく効果の測定や改善をすることで、成果が出せます。効果測定の方法、タイミングなどもあらかじめ決めておきましょう。
製造業でのコンテンツマーケティングの手法
製造業がコンテンツマーケティングで取り入れるおもなコンテンツの特徴と、適したシーンとともに解説します。
Web記事
製品ページやオウンドメディアサイトなど、検索からの新規の流入が見込めるコンテンツです。キーワードを決めて、ページが上位表示されるためのSEO対策をして記事の制作をし
ます。
インフォグラフィック
インフォグラフィックとは、イラストや図を用いたコンテンツです。テキストだけでは説明しづらい、製品商品や技術紹介などのコンテンツに向いています。LPページにインフォグラフィックを設置してユーザーの興味をひき、流入からの離脱を防ぐのにも有効です。
動画
制作した動画をWebサイトやYouTube、企業のSNSアカウントなどでコンテンツとして公開する手法です。動画公開のプラットフォームとして企業のYouTubeチャンネルを開設する製造業も多くなりました。
動画は音声と動画によるアプローチができるため、製品紹介、事例紹介、インタビューなどのコンテンツ制作に活用できます。
ホワイトペーパー
自社の製品やサービスに関する技術情報など、ユーザーにとって有益な情報資料をダウンロードできるコンテンツです。ホワイトペーパーをダウンロードするためにユーザーのメールアドレスなどを入力してもらうことで、個人情報というリードを獲得できます。すでにほかのコンテンツで獲得したリードを育成するのにも、ホワイトペーパーは有効です。
リサーチレポート
アンケートの集計と調査結果をまとめて業界の注目するテーマや最近の動向を説明する、またはレポートで公開する記事です。リサーチレポートを参考にすると、リード獲得へのアプローチ方法がわかります。
ウェビナー(情報提供型)
オンラインで行うセミナーが、ウェビナーです。セミナー参加者からのリード獲得に向いています。従来の対面式のセミナーよりも時間と場所の制約があまりないため、参加者を集めやすく、質問やアンケートを文字で入力できるので参加者も発言しやすいのが特徴です。
対面式のセミナーよりも顧客の反応を効率的に収集できるメリットもあります。
メルマガ
購読希望のメールアドレスを登録したユーザーに対して、企業の担当者やWebサイトから一斉に配信されるメールがメルマガです。新製品の紹介、最新の業界動向や変化、製品開発の裏話などをメールの内容として定期的に配信します。
メルマガ登録ユーザーは、Webサイトをチェックしなくてもメールから新着情報を受け取れるのがメリットです。メルマガを活用することでユーザーへの企業とのつながりを意識させたり、自社の製品や業界のトレンドを発信することでファンを増やしたりが可能となります。
導入事例
自社製品や技術を導入したことで、成果を上げた顧客の事例を紹介するコンテンツです。信頼性が高いコンテンツとして、見込み客に製品や技術のイメージをあたえるのに有効となっています。
BtoBマーケティングにおけるリードの商談につなげるのにも、導入事例は活用できるでしょう。事例を一覧として画像やテキストとともに紹介するほか、インタビュー形式の動画コンテンツとして公開する方法もあります。
ウェビナー(サービス紹介型)
既存のリードに対して具体的な商談を進めるためのウェビナーです。ほとんどが個別の打ち合わせとして行われています。個別のフォロー、課題の解決の提案、とすすめてリードにつなげたいときに有効です。
製造業のコンテンツマーケティング事例
実際にコンテンツマーケティングを取り入れて成功している製造業の企業の事例を紹介します。
株式会社キーエンス
カテゴリーごとに分けられた製品説明と改善事例、更新コンテンツ「ものづくりお役立ち情報」をおもなコンテンツとしてコーポレートサイトに掲載しています。改善事例は「印字不良でお悩みですか?」「用途事例から選定するだけ」など、ユーザーが持つ課題を引き出しつつ、解決のための提案を行うコンテンツとなっています。
同一サイト内にカタログ、技術資料、マニュアルのダウンロードがあるためコンテンツ閲覧後すぐにリードにつなげやすい構造となっているのも特徴です。
▼株式会社キーエンス コーポレートサイト
https://www.keyence.co.jp/
ローム株式会社
ローム株式会社では、異なるターゲットを想定した複数のコンテンツを展開しているのが特徴です。技術者向け、デバイスごとのノウハウ・技術に関する記事を提供する「Tech Web」、エンジニア向け、先端技術やイベント紹介のほか「●●を作ろう」記事も多い「DEVICE PLUS」、顧客向け、半導体や抵抗器の基礎知識や専門用語を検索できる「エレクトロニクス豆知識」と、コンテンツごとにWebサイトをそれぞれ構築し、独立するメディアとして運営しています。
各メディアからリンクしているコーポレートサイトには、動画による製品紹介コンテンツやウェビナーを掲載しています。ユーザーの属性ごとにリードにつなげ、最終的に製品の購入や契約へ誘導できる構成となっているのも特徴です。
▼Tech Web
https://techweb.rohm.co.jp/
▼DEVICE PLUS
https://deviceplus.jp/
▼エレクトロニクス豆知識
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics
株式会社村田製作所
コーポレートサイトにて製品紹介をはじめとした用語知識などのデータベース系のコンテンツを充実させているのが特徴です。サイト上部に検索窓、製品情報は大カテゴリ、小カテゴリでのプルダウン選択で検索できるなど、目当ての情報を引き出しやすい工夫をすることで流入したユーザーの離脱も防いでいます。
事例紹介も活用した課題解決のためのソリューションの提案コンテンツ、カタログや資料のダウンロード、動画などリードごとのコンテンツも充実しています。特別コンテンツやサービスを利用できる会員制サイト「my Murata」へのリンクもあり、会員登録のリードにもつなげています。
▼株式会社村田製作所 コーポレートサイト
https://www.murata.com/ja-jp
株式会社JMC
3Dプリンター、鋳造、CTスキャンと自社の製品と技術サービス別にWebサイトを展開しています。以下のように、取り扱っている製品と技術によって異なるコンテンツを設けているのが特徴です。
・3Dプリンターのサイト…「製作事例」「3Dプリンターの基礎知識」など
・鋳造のサイト…「生産工程の紹介」「バーチャル工場見学」「砂型鋳造のノウハウ」など
・産業用CTスキャン…「活用事例」「CTスキャンのボクセルサイズシミュレーターとビデオ講座」「サンプルのダウンロード」など
コーポレートサイトから各サイトへのリンクがあり、ユーザーの持つ課題に応じたWebサイトへ誘導できます。
▼株式会社JMC コーポレートサイト
https://www.3d-printout.com/
YKKスナップファスナー株式会社
ユーザーに視覚的なインパクトを与えるインフォグラフィックをWebサイト内に多く活用しているのが特徴です。主力製品である「ボタン」と「スナップファスナー」を際立たせるために、Webサイト全体がジーンズを模したデザインとなっています。
「ボタンの歴史がわかるインフォグラフィック」「日本のジーンズの歴史」のコンテンツでも、インフォグラフィックを採用しています。時系列に該当するボタンとジーンズのイラストとテキストを並べることで、ユーザーが円滑に情報を取り入れられるコンテンツを実現しているところにも注目です。
▼YKKスナップファスナー株式会社 コーポレートサイト
https://www.ykksnap.co.jp/index.html
株式会社石井精工
複数の成形型のゴム金型に対応しているため、一般的な形はもちろん複雑な形のゴム製品づくりも行っているメーカーです。ゴム製品の業種ごとの制作事例をはじめとしたテキストと画像のコンテンツのほか、動画コンテンツを豊富に設けています。
自社のYouTubeチャンネルを開設し、ゴム製品や金型に関するノウハウ知識の動画から、ゴム業界への転職まで、さまざまな動画コンテンツを定期的に配信しています。コーポレートサイトにも動画が埋め込みリンクされています。
▼株式会社石井精工 コーポレートサイト
http://ishiiseikou.com/
製造業がコンテンツマーケティングを成功させるポイント
製造業のメーカーやサプライヤーでは、Webマーケティングそのものに慣れていないこともあります。コンテンツマーケティングを導入し、成果を上げるために覚えておきたいポイントを解説します。
Webマーケティングのノウハウを取り入れる
せっかくコンテンツを制作しても、ユーザーに発見されないとマーケティングの成果にはつなげられません。コンテンツのページが上位表示されるためのコンサルティングを受けたり、SEO対策などをはじめとした施策を行ったりが求められます。
将来的に自社のコンテンツの内製化を進めたいのなら、SEOツールの導入もおすすめです。SEOツールを導入することで、具体的な取り入れるべきキーワードやコンテンツの方向性などが分かります。Webマーケティングに明るくない担当者でもノウハウを身に付けられるだけでなく、SEO対策やユーザーニーズをふまえたコンテンツの制作につなげられるでしょう。
コンテンツの独自性と専門性を維持する
製造業がコンテンツマーケティングで発揮できる強みといえば、製品や技術の持つ専門性や独自性です。独自性と専門性を保ったコンテンツを継続して制作できる体制を整えておきましょう。
コンテンツの制作を外注するときには、記事の専門性の高さからコンテンツの量産や更新が難しい場合があります。コンテンツ制作において外注する範囲を考えておく、ゆくゆくは内製できるようにSEOツールなどを導入したコンテンツ制作を検討するなどが必要です。
製造業のコンテンツマーケティングは多くの可能性がある
製造業におけるコンテンツマーケティングのメリットや代表的なコンテンツ、企業の事例、成功させるポイントを解説しました。製造業がコンテンツマーケティングを成功させるには、コンテンツを通じて自社の製品や技術がユーザーの悩み、課題の解決につながるということをいかに伝えられるかが重要です。
自社の強みを理解する、ユーザーの求めるものを把握するためにSEOツールを導入するなどして、利益の最大化につながるコンテンツマーケティングをぜひ実現してください。