化粧品業界のコンテンツマーケティングのポイントとは? Webサイトでの施策や企業の事例を解説
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Web上のコンテンツを通じて集客や商品の販売、ファンづくりを実現するコンテンツマーケティングは、化粧品業界の多くの会社でも導入されるようになりました。一方これからコンテンツマーケティングを導入したくても具体的な戦略や施策が分からない、または導入したが商品の購入までつながらない、といった悩みを持つ担当者の方も多いでしょう。
この記事では、化粧品業界におけるコンテンツマーケティングのメリットや成功させるポイント、さらに各企業の事例について解説します。
コンテンツマーケティングについてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
化粧品業界にWebマーケティングが広がる理由
近年化粧品業界でもコンテンツマーケティングを含めてWebを活用したマーケティングが拡大を見せています。その背景にある理由を解説します。
インバウンド需要の消失
令和3年4月に「化粧品産業ビジョン検討会」が発表した資料「化粧品産業ビジョン」によると、日本の化粧品市場規模は約350億USドル(同年、約3.8 兆円)です。これは米国(同年において約 777 億 US ドル(約8.5 兆円))、中国(2019年に約 572 億 US ドル(約6.2 兆円))に次ぎ、世界第3位となります。
日本の化粧品は機能性や品質が良いほか、安全性の高さから海外でも人気が高く、コロナ前のインバウンド需要では 2019 年には過去最高の 1.7 兆円の出荷額を記録しました。ところが、新型コロナウィルス感染症の影響でインバウンド需要が消失してしまいます。日本国内の化粧品企業の競争力と継続性を得るために、Webマーケティングが重要視されています。
新型コロナによる需要消失と対面自粛
新型コロナウイルスによる外出自粛によってメイクをする機会が減少した結果、化粧品の国内需要も減りました。
対面での接客や販売サービスも自粛が進みます。美容部員によるタッチアップやカウンセリングをはじめとした、化粧品の顧客体験の価値を高めるための接客サービスや販売サービスも、休止する化粧品メーカーや販売店が増えました。
対面ではなくWebによる販売機会へシフトしたことで、Webでのマーケティングが求められています。
日本の化粧品の海外進出
世界の化粧品市場規模は拡大傾向にあります。独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)が実施した「中国の消費者の日本製品等意識調査(2018 年 12 月)」によれば、中国の消費者に日本から越境ECで購入した製品、購入したい製品についてアンケートで質問したところ、いずれも基礎化粧品が1位という結果になりました。
海外へ日本の化粧品を販売する、越境ECサイトが拡大の動きを見せています。
外国企業の台頭
世界の化粧品市場で近年中国、韓国のアジア圏の国が台頭するようになりました。化粧品産業ビジョン検討会発表「化粧品産業ビジョン」の「日本における化粧品の輸入額・輸入国の推移」では、2020年に日本の化粧品輸入国第2位がアメリカから韓国になります。
「SHIBUYA109 lab.トレンド大賞2022」のノミネート一覧のコスメ・スキンケア部門でも「A’peir」「innisfree」「rom&nd」などの韓国コスメブランドが名を連ねています。国内の化粧品メーカーが韓国メーカーや中国メーカーとの競争に勝つためにも、Webを活用した日本国内でのファンの醸成が急務と言えるでしょう。
デジタル技術の進化
IT技術の進歩により、個人データの蓄積や分析が簡単になりました。化粧品業界でも、カスタマイズやオーダーメイドの化粧品をより身近なサービスとして提供しています。
インターネットの普及により、ECサイトやオンライン接客などの新しい購入機会の体験の提供ができるようになりました。実際に化粧品を使用したユーザーからの口コミや評判を取り入れた、口コミサイトやSNSを活用したWebマーケティングも拡大傾向にあります。
異業種から化粧品業界への参入
1971年ヤクルトの乳酸菌成分を活用した化粧品、1977年味の素のアミノ酸成分を活用した化粧品など、食品、飲料、医薬、化学、機械、小売と異業種から化粧品業界に参入する企業が増えました。2005年の改正薬事法の施行で、製造工程を外部に委託できるようになったのも追い風となっています。
異業種からの参入でも、ECサイトを活用すればメーカーから直接消費者へ販売ができるチャネルを持てます。Webからの販路を得れば、大企業だけでなく中小企業にも大きくビジネスチャンスを広げられるでしょう。
化粧品業界がコンテンツマーケティングに取り組むメリット
化粧品業界がコンテンツマーケティングに取り組むメリットを解説します。
潜在的な顧客を発掘できる
コンテンツによってユーザーが持つ課題や悩みの解決方法への気付きを与えられます。直接自社の製品を知らない潜在的なユーザーの発掘やリーチにもつながるでしょう。
対面ではできない顧客体験の提供
ネオマーケティング実施の「withコロナでの美容意識と購買行動」によると、今まで使ったことのない化粧品をオンラインで購入した経験がある人は全体の4割で、化粧品を選ぶときには自分の肌に合ってるかを重視する女性が多いという結果が出ました。
コロナ禍により化粧品の対面販売やテスターを提供する店舗も少なくなりました。化粧品メーカーが提供するコンテンツは、従来の方法に代わってユーザーが「自分の肌に合うか」を試せる・確認できる体験も与えられます。
ブランディングに向いている
ユーザーにとって有益なコンテンツを提供し続けるコンテンツマーケティングは、ブランディングやファン化に有効です。ファン化したユーザーは、自社のブランドの製品を購入する、自社の情報を拡散するなどの行動を行います。
自社で運営するメルマガやブログ、動画などのコンテンツ以上に、ファン化したユーザーが認知度の向上や利益の拡大に貢献してくれる可能性もあります。
ほかの施策よりもコストがかからないことがある
コンテンツマーケティングで提供するコンテンツの中には、無料で作成できるものもあります。Web広告やインフルエンサーマーケティングなど、ほかのマーケティング施策よりもコストが低く抑えられる可能性があります。
化粧品業界のコンテンツマーケティングのデメリット
コンテンツマーケティングはメリットも多い一方デメリットもあります。化粧品業界でコンテンツマーケティングを展開する前に覚えておきたいデメリットを解説します。
すぐに効果を出すのは難しい
コンテンツマーケティングは長期的、継続的にコンテンツをユーザーに提供することでファン化やブランディング、利益につなげる施策です。Web広告などのほかの施策よりも、成果が出るまでは時間がかかることがあります。
コンテンツをユーザーに届けるためのSEO対策や、コンテンツ改善のための分析も継続的に行っていきます。
運用体制作りが必要
コンテンツマーケティングの運用には、コンテンツ制作や更新のための体制が必要です。外注する場合も依頼先を選定しなければいけません。内製する場合には担当者決めや、必要に応じた支援ツールの導入も検討しましょう。
化粧品業界のコンテンツマーケティングの手法
化粧品業界のコンテンツマーケティングで取り入れられている代表的な手法の特徴を解説します。
口コミ
実際に商品を購入、使用した消費者からの評価や感想をコンテンツとして利用する方法です。自社サイトや口コミサイトへの掲載やSNSでの発信がおもな手法となっています。
化粧品を試す前に使用感を知りたいユーザーのニーズを満たすほか、商品の認知度向上にも役立ちます。集まった口コミは新商品の開発や改善に活用できるでしょう。ただし、悪い口コミがつくと商品や自社のイメージダウンの恐れがあります。
ポータルサイト
化粧品の総合ポータルサイトから情報を発信する方法です。大手のポータルサイトの場合多くのユーザーから閲覧されることがあるので、認知度向上に有効となっています。サイトへの集客もポータルサイト側が行ってくれます。ただし掲載料が必要です。
オウンドメディア
自社のWebサイトを構築して情報を発信する方法です。コーポレートサイトのメニューとして構築する方法や、ブログやメディアサイトを別に運用する方法があります。サイトデザインやテーマ、掲載するコンテンツなども自由に設定できるためブランディングにも有効です。
サイトやコンテンツの制作のほか、SEO対策をはじめとしたWebサイトへの誘導のための施策が求められます。
動画
商品のイメージや使い方に関する動画を制作し、コンテンツとして配信する方法です。テキストや静止画では伝えられない、動作や音声によるアプローチができます。短い時間で、テキストや静止画よりも多くの情報を伝えられるのもメリットです。
動画が自社で作成できないときには、外注も検討する必要があります。
化粧品業界に有効なその他のマーケティング手法
化粧品業界で有効なWebマーケティング手法は、コンテンツマーケティング以外にもあります。コンテンツマーケティングと組み合わせることでもより多くの成果が出せる、ほかの手法を紹介します。
SNSマーケティング
会社や商品の情報をSNSで発信する方法です。おもに画像や動画を中心に投稿します。SNSはサービスによって特徴やユーザー層が異なるため、ターゲットに合わせたSNSを選ぶのが重要です。
総務省発表の「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、おもなSNSの利用者層の上位と男女比は以下のようになっています。
・Twitter…20代79.8%、男性42.7%、女性41.8%
・Facebook…30代48.0%、男性32.4% 女性31.4%
・Instagram…20代68.1%、男性35.3% 女性49.4%
・TikTok…10代57.7%、男性15.3%、女性19.4%
以上の結果から見ると女性をターゲットにするなら女性ユーザーが多いInstagramに、男性向け化粧品のキャンペーンなら20~30代や男性ユーザーも多いTwitterやFacebookを使うなど、ユーザーの属性や目的に応じたSNSを選んで配信しましょう。
SNSアカウントは無料で取得できるものが多いため、コストをおさえてマーケティングができます。SNSを通じて情報の拡散も期待できます。ただし、各SNSの運用のためのリソースがかかります。
インフルエンサーマーケティング
ある分野へ世間への影響が大きい人物である、インフルエンサーを起用したマーケティングの手法です。起用するインフルエンサーは、化粧品業界のターゲットとなるユーザーからの興味関心が高いYouTuberやインスタグラマーなどを選定しましょう。
おもなインフルエンサーマーケティングには、以下のものがあります。
・インフルエンサーが自社の商品を使った感想やメイク画像をSNSなどにアップ
・インフルエンサーが自社の商品を使ったメイク動画のアップ
・インフルエンサーとコラボした商品開発やキャンペーン、イベントの実施
自社や商品の認知度向上に大きな効果が期待できる一方、インフルエンサー探しや選定の手間と依頼費用がかかります。
Web広告
以下のような、Web上の媒体に掲載される広告を出す方法です。
・YouTube広告
・Facebook広告
・Instagram広告
・Twitter広告
ターゲットとするユーザー、費用など何を目的にするかに合わせて柔軟に広告出稿ができます。トレンドやマーケットの変動が激しい化粧品や美容業界でも、市場を反映した広告を出せるでしょう。
広告を出すには、当然ですが費用がかかります。
化粧品業界企業のコンテンツマーケティング事例
すでにコンテンツマーケティングを導入している化粧品メーカーや関連企業も多くあります。化粧品業界の企業のコンテンツマーケティング成功事例を紹介します。
株式会社ドクターシーラボ
お肌のケア方法や日焼け止めの選び方などの美容に役立つ「美肌コラム」とドクターシーラボ創業者のドクター城野が語る健康と美のヒントを提供する「Dr.城野’s コラム」の、
ふたつのオウンドメディアを運用しています。
オンラインショップを兼ねたWebサイト内にコンテンツがあるので、ユーザーが興味を持てば商品へすぐにリーチできる構成となっています。
▼美肌コラム / Dr.城野’s コラム
https://www.ci-labo.com/column/list.html
株式会社資生堂
会員制サイト「ワタシプラス」を運用しています。最新のトレンドやメイク、スキンケアのハウツー、肌チェックなどの化粧品や美容の関連記事を随時更新中です。
オンラインショップのポイント管理、実店舗である資生堂のカウンターへの来店予約もできます。会員制にすることで、顧客との接点の維持による囲い込みとファン化を両立させたコンテンツの事例です。
▼ワタシプラス
https://www.shiseido.co.jp/wp/index.html
株式会社SOLIA
乳児および子供向け、男性向け、女性向け、インナードライ向けの「メイドインジャパン」の化粧品やスキンケア製品ブランドを幅広く展開するメーカーです。スペシャルコンテンツとして、スキンケアやヘアケアに関する情報を発信しています。
メンズスキンケアの方法、梅雨時期のヘアケアのハウツーなど、ターゲットをしぼった記事をコンテンツとして展開しているのが特徴です。
▼SOLIA SHOP
https://www.alo-organic.com/shop/pages/specialcontents
ザ・プロアクティブカンパニー株式会社
自社で展開しているニキビケア製品へのリーチにつなげるために、にきびについての基礎知識、正しいスキンケア方法、豆知識のコンテンツを展開しています。
また、実際に自社の製品を使用したユーザーの体験談をコンテンツとして提供しているのも特徴です。対面やテスターに変わる方法で、使用前の製品についての情報を得られる機会を閲覧者に提供しています。
▼プロアクティブ
https://proactiv.jp/stories
株式会社ファンケル
記事と動画コンテンツを中心に更新されている「そこまでやりますチャンネル」をオウンドメディアとして展開しています。落語家林家たい平氏による落語の動画、3ヶ月で健康ボディを目指すチャレンジコンテンツ、夏休みの自由研究のお手伝いなど、さまざまなコンテンツがあるのが特徴です。
あえて自社製品やスキンケアなどから外した内容を取り入れることで、検索からのユーザーの流入を見込める構造となっています。
▼そこまでやりますチャンネル
https://channel.fancl.jp/article/category/index
株式会社リアル
米ぬかを成分として配合したスキンケア化粧品やヘアケア品、生活雑貨を展開するメーカーです。きれいになれるメニューのレシピを集めた「美人ぬかレシピ」や生活に関する情報を、ECサイトのブログにて配信しています。
ECサイト内にあるコンテンツのため、ブログから得た情報の鮮度が落ちないまま、ユーザーを商品ページへ誘導できます。
▼美人ぬかストア
https://store.bijin-nuka.com/category/bijin/recipe/
株式会社花王
子供向け、敏感肌向け、女性向け、男性向けとターゲットをこまかく設定した多くのブランドを展開するメーカーです。
ヘアケア、スキンケア、健康、食生活と同じくターゲットをこまかく設定した複数のオウンドメディアを展開しています。ターゲット別にオウンドメディアを展開することで、ブランディングやファン化に有効です。また、ファンとなったユーザーがほかのブランドにも興味を持つことも期待できます。
▼Kao健康ラボ
https://www.kao.co.jp/health-laboratory/
化粧品業界のコンテンツマーケティングを成功させるポイント
化粧品業界の企業がコンテンツマーケティングで成果を上げるためのポイントを解説します。
ターゲットを明確にする
定めたターゲットによってコンテンツの方向性が異なります。まずはターゲットを明確にするために年齢や性別、職業、趣味、情報収集方法などを決めてペルソナ設定をしましょう。
ペルソナ設定をすると、ユーザーニーズが把握しやすくなります。ユーザーニーズを分析したうえでのコンテンツを作成できるでしょう。また、ペルソナ設定は、社内でのターゲット像の共有にも役立ちます。
自社の強みを知っておく
自社の強みを知っておくことで、コンテンツを通じて競合よりも優位性を築けます。自社が持っていて他社が持っていないことを分析しておきましょう。
薬機法違反とならないように表記に気を付ける
化粧品で「効果、効能」をうたうと薬機法違反となります。コンテンツ作成時、薬機法遵守のための表記や表現についても知っておきましょう。
化粧品業界のコンテンツマーケティングを成功させよう!
化粧品業界は、市場や社会情勢の変化からコンテンツマーケティングの重要性が高まっています。コンテンツマーケティングを取り入れることで、既存の顧客はもちろん、新規の顧客の取り込みやファン化も実現できます。
目的に応じたコンテンツを作成し、自社の商品の認知度や利益の向上につなげましょう。