コンテンツマーケティングにも活かせるマーケティングファネルとは?【基礎から実践アイデアまで徹底解説】
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マーケティングファネルは、顧客が商品を認知してから購入に至るまでの過程を行動パターンで区切り、逆三角形の図で表したものです。カスタマージャーニーマップと組み合わせることでコンテンツマーケティングの効果検証や弱点の分析にも応用でき、戦略を成功に導くために非常に便利なマーケティング手法です。
本記事ではその概要と活用方法について紹介します。
コンテンツマーケティングについてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
マーケティングファネルとは? 基本的な仕組みを解説
ファネルはマーケティングの基本手法
商品やサービスを認知してから実際に購買にいたるまでの行動面の変化に焦点をあて、人数の変化を表した図です。逆三角形なのは、徐々に顧客候補が自然に脱落していくからで、企業側でふるいにかけているわけではありません。
企業側は脱落を抑制するためにファネルを活用し、それぞれの区分に分類された顧客グループに対して離脱理由の分析を行いながら、次のプロセスへ誘導するための施策を検討します。
論理的な手法に思えるマーケティングファネルですが、古い手法であるとの指摘もあります。そこには2点の理由があります。消費者の価値観を考慮にいれていないことと、行動パターンの多様化の2点です。マーケティングファネルで何もかも解決しようとせず、メリットの活用に徹する、あるいは弱みを補う仕組みと併用するなどデメリットを承知した上で使えば、マーケティングファネルは今でも立派に通用する便利な手法です。
AIDMA(アイドマ)とAISAS(アイサス)
AIDMA(アイドマ)の法則は、顧客獲得に至るまでの行動パターンで見込み客を分類する手法です。1920年代に提唱された古い法則ですが今でも有効な分類手法のひとつとして活用されています。一般的なファネルのモデルもAIDMAの法則を図式化したものです。
A(Atension=商品を知る)、I(interest=興味、関心を持つ)、D(Disire=欲しいと感じる)、M(Memory=記憶する、覚えておく)、A(Action=購入する)の5段階に購買までの行動プロセスを分けて、それぞれを強化するような広告やキャンペーンを投入を検討しようという考え方です。
ネットの普及は、テレビや新聞などのマスメディアを通じた一方通行の情報流入から、消費者自らが必要なものを探したり、SNSで情報を発信したりできる多様性をもった情報への変化を促しました。そこでAIDMAの法則に変わるように登場したのが、AISASの法則です。これは、A(Attention=商品を知る)、I(Interest=興味、関心を持つ)、S(Serch=情報を集める)、A(Action=購入する)、S(Share=感想などを共有する)の5段階で構成されます。
広告やキャンペーン情報を鵜呑みにするだけでなく、検索サイトなどから必要な情報を能動的に取得する点、購入で終わらずに使用感などを発信することで後に続く見込み客にも影響を与える点が特徴です。
マーケティングファネル3つの種類
マーケティングファネルにはテンプレートともいえる3つの種類があります。行動パターンから戦略を検討、立案するマーケティングファネルは目的に合致したファネルを使い分けることが大切です。
パーチェスファネル
もっとも基本的なマーケティングファネルがこのパーチェスファネルです。スタンダードな行動パターン分析手法であるAIDMAの法則をモデル化したもので、各階層はAIDMAの法則に合わせて区切られます。
消費者の価値観という視点が抜けている点と多様化する行動モデルに対応していないという弱点はありますが、全く使えないということはありません。行動の多様化の裏には従来通りの顧客層も含まれています。大きく離脱が発生しているフェイズを見極めることで、最終的な購買者アップにつなげることができるでしょう。
シンプルなわかりやすさもパーチェスファネルのメリットです。欠点を把握し、適切な使い所を選ぶことで有益なモデルです。
一般顧客をターゲットとしたBtoCでなく、商品やサービスの選定者と決定者が異なるBtoBではまだまだ有効なモデルとして活用されています。企業の購入決定プロセスが変化していないからでしょう。
インフルエンスファネル
マーケティングファネルは商品認知から購買までのプロセスを図式化したものですが、インフルエンスファネルは、購買後の行動パターンを図式化したものです。形も逆三角形でなく普通の三角形で、購買後の行動パターンを発信、紹介、継続の3つに分割します。
インフルエンスファネルはAISASの法則を取り入れて作られたファネルモデルであり、商品購入が一回だけで終わらず継続的に購入するようになり、知人に商品を紹介し、SNSなどのネット媒体を使って広く発信するようになる3段階の行動パターンで作られたモデルです。インフルエンスは影響、影響力という意味で、すなわちインフルエンスファネルとは情報発信による影響度を図式化したファネルなのです。
自社サービスや商品についてのユーザーの満足度を知り、どのような内容が発信されているのかを調査してみることが大切です。もし顧客満足度が低く厳しい内容のレビューが多ければ、優先的にそのポイントの改善に取り組みましょう。顧客満足度を高めることができれば、継続者も増え、好意的な情報を発信してくれる人数も増えていくことが期待できます。
ダブルファネル
ダブルファネルは先に紹介した2つのファネルを1つに統合したものです。パーチェスファネルの最終段階である購買の先に、インフルエンスファネルのスタートである継続を接続したファネルで、砂時計のような形になります。オーソドックスな行動パターンを利用したマーケティングとネットを活用する顧客層へのマーケティングの2段階構成で幅広い戦略立案が可能になります。
例えば、商品購入後のSNS投稿でクーポンプレゼントやお友達紹介で紹介者とお友達にクーポンプレゼントのような企画を行うことで、購買に至るまでの脱落防止と購入後の紹介、発信の増加にも期待できます。2つのファネルの相乗効果を活かせる企画を推進できる点が大きなメリットです。
マーケティングファネルとカスタマージャーニーマップ
マーケティングファネルとカスタマージャーニーマップの違い
マーケティングファネルの弱点に顧客の価値観が反映されていない点があります。価値観とは行動を決定するときに重視するポイントや判断に至る考え方となるものです。端的にいえば、行動の動機、心理状態といえます。
カスタマージャーニーマップは、認知から購買に至る行動だけでなく、その行動の内面に隠れた心理状態や行動の動機、そしてそこで実施されていた施策を一覧に整理したものです。行動を可視化したものがマーケティングファネル、心理と施策を可視化したものがカスタマージャーニーマップです。
カスタマージャーニーマップは横軸に認知から購買までの行動パターンを記述し、その上に顧客の心理や自社サイトや商品、サービスについての印象などを付け加えていきます。合わせてそこで行われていた自社の施策も記入していくことによって、製品やサービスに関する印象や好感度などの心理状態と、先のステップへ誘導するための施策の質や量を見直すことができます。
記述する項目が多いので、慣れないうちはわかりやすい図表を作るのが難しいというデメリットもありますが、マーケティング戦略全体を顧客の行動と心理状態、自社の施策という視点で俯瞰してみることができるので、改善策が検討しやすいという大きなメリットがあります。
カスタマージャーニーマップには、認知から購買までのマーケティング戦略を視覚化したマクロ型と特定のフェイズに着目して作成するミクロ型の2種類があります。自社のマーケティングが抱えている課題に合わせて使い分けましょう。マクロ型で課題となる箇所を探し、問題点を掘り下げるためにミクロ型を作成するような活用方法もあります。
双方のメリットを活かしたマーケティング戦略
マーケティングファネルは各フェーズごとの人数の推移を把握するための手法です。なぜそのような行動に至ったのかといった理由や心理的な情報は持っていません。
一方のカスタマージャーニーマップは顧客の課題に対して明確な解決策を提供することが目的です。顧客の行動と心理を合わせて図式化することで、マーケティングが場当たり的な施策の繰り返しでなく、連続した顧客育成戦略へと変わっていきます。
マーケティングファネルから離脱した顧客への課題の解決精度もあがり、より効果的なコンテンツを投入することもできるようになります。
うまく利用できれば非常に有効なカスタマージャーニーマップですが、顧客心理の読み取りに定められたゴールはありません。わかりやすいカスタマージャーニーマップづくりはやや難易度が高いというデメリットも抱えています。さらに1度作ったら終わりではなく、流行の変化や新しいチャネルが登場したとき、自社の施策を改善したあとなどにはカスタマージャーニーマップのアップデートが必要になります。
チーム全体で必要な情報量のレベルや見直しのタイミングを共有し、効率的な運営体制を整えることがカスタマージャーニーマップの活用には欠かせません。
コンテンツマーケティングの戦略設計にファネルを活かす
潜在顧客に向けたコンテンツ
マーケティングファネルの最上位に位置する顧客群をTOFU(Top of the Funnel)あるいは潜在顧客といいます。顧客といってもまだ購入はしておらず、これから自社製品を知ってもらう潜在的な顧客候補という段階です。
この段階では広く認知拡大を目指すことが主な目的となります。近年利用者数が減少していますが、テレビや新聞などのマスメディアを使うCMや広告はまだ有効な方法です。
ネット利用者への認知拡大施策は、商品のPR動画や企業イメージを伝えるブランディング動画が効果的です。動画コンテンツへの流入を増やすために、関連するキーワードのSEO対策も不可欠です。
見込み客に向けたコンテンツ
自社ブランドや商品を知ってはもらえたがまだ購入には至らない顧客群を見込み客(
MOFU(Middle of the Funnel))といいます。何かのきっかけでふと思い出す、少し気になっているという段階です。
せっかくの認知がそのまま記憶に埋もれてしまわないようにすること、商品やサービス利用のメリットを詳しく伝えていくことで購入へ意識をシフトさせていくことが、見込み客に対する施策の目的となります。Webコンテンツでは、商品への興味を高めつつ疑問の解消や使用によるメリットを訴求するランディングページを用意します。商品資料の無料ダウンロード、商品のサンプル請求、疑問に答えるFAQページ、詳しい商品紹介動画などを用意しましょう。顧客の興味に対して誠実に向き合うコンテンツを整備しておくことは、顧客から信頼を得るために必要な施策です。
直近客に向けたコンテンツ
商品やサービスへの理解もある程度深まり、購入しようかどうしようか迷っている段階の顧客群を直近客(BOFU(Bottom of the Funnel))といいます。
自身のニーズに合ったより良い商品を比較検討したり、既存ユーザーの体験談を参考にしたりし、商品購入の最後のひと推しを求めている顧客群です。
リスティング広告やメールを使ったキャンペーンの告知などが効果的な手段です。リピートユーザーの事例動画や体験談を掲載したランディングページへの誘導も購入へのひと推しが期待できます。
ファネルを分析し質の高いコンテンツマーケティングを推進しよう
ファネルの分析で脱落ポイントを見つけ出す
マーケティングファネルを利用することで、フェーズごとの人数の推移把握が視覚的にわかりやすくできます。認知から購買に至るまでの、どのフェーズで多くの離脱が発生しているのかを把握することも容易になります。
多くの離脱が発生している箇所は、改善によるインパクトがもっとも大きくなる箇所でもあります。改善の余地のない完璧な戦略はありえません。どの戦略にも大小様々な課題が埋もれているものですが、どこから改善に着手するかが重要です。改善難易度は低くても優先順位も低い場合、仕事をしても成果が見えにくく、スタッフのモチベーションにも関わります。
マーケティングファネルを利用することで、課題解決の優先順位を明確にすることが可能になります。
脱落ポイントにおけるコンテンツマーケティングの再考
マーケティングファネルは潜在顧客から購入までのプロセスを図式化したものなので、販売手法の種別に関わらず、広く分析に利用することができます。稼働人数の減少が大きな箇所を見つけ出し、カスタマージャーニーマップを併用し要因を分析し、改善策を立案します。
例としてプロモーションサイトの訪問数に対して、無料サンプル応募ページのコンバージョン率が異常に低いという課題が見つかったとします。この場合ページ内の導線がわかりづらい、応募ボタンの設置場所が悪い、応募フォームに記入する項目が多く面倒臭いなどの原因が考えられます。
コンテンツマーケティングの効果促進、品質向上に活用
顧客育成という長い道のりの中のボトルネックの把握に貢献するマーケティングファネルと離脱要因を顧客心理や実施施策の見直しで分析するカスタマージャーニーマップは、コンテンツマーケティングの成果をあげるためにも相性のよい手法です。動きの芳しくない顧客層に対して、導入されていた施策(=コンテンツ)を改善することは、コンテンツマーケティングで重要なコンテンツの品質向上に直結するからです。
コンテンツマーケティングはコンテンツの質と量が重要な施策です。質を計測する方法はPV数、読了数、コンバージョン率など多岐にわたりますが、それらを個別に分析する前にマーケティングファネルで改善すべき場所を把握しておくことは、コンテンツマーケティングの運用効率の向上にも大いに貢献してくれることでしょう。
戦略立案に便利なマーケティングファネル
マーケティング戦略を検討するとき、ターゲットに適したアクションを立案することはとても重要なポイントです。顧客全体をひとかたまりにせずターゲットを分けるファネルマーケティングは、最適なコンテンツ戦略立案にも役立つ方法です。カスタマージャーニーマップと合わせることで、より質の高いコンテンツ制作も期待できることでしょう。
施策実施後に速やかに効果検証ができるように、分析しやすいKPIを設定することも心に留めておきましょう。